意味
「切歯扼腕」とは、怒りや悔しさのあまり歯を食いしばり、思わず自分の腕をつかんでしまうほどの激しい様子を表す四字熟語です。
感情を胸の内に収めきれず、体の動きにまで出てしまっている状態を指します。
静かに耐えている場面ではなく、怒りや無念さがあふれている場面で使います。
- 切歯(せっし):歯を強くかみ合わせること。
- 扼腕(やくわん):自分の腕を強く握りしめること。
語源・由来
「切歯扼腕」は、中国の歴史書『史記』の張儀列伝に出てくる一節から生まれました。
戦国時代の中国では、諸国を渡り歩いて君主に外交策を売り込む遊説家たちが活躍していました。
秦に仕えた張儀は、そうした遊説家のやり口を君主に説明する中で、彼らが夜も昼も腕を握りしめ、目を見開き、歯ぎしりをしながら自分の策の有利さをまくし立てる、と語っています。
天下の游談の士、日夜搤腕瞋目切歯して従の便を言わざるはなし
ここでの歯ぎしりや腕を握る動作は、怒りではなく熱弁の激しさを表していました。
それが日本に入ってから、怒りや悔しさで体がこわばる様子を指す言葉として定着しています。
使い方・例文
「切歯扼腕」は、力の及ばなかった悔しさや、理不尽な仕打ちへの怒りを表す場面で使われます。
- 逆転負けの報を聞いて、監督は切歯扼腕するばかりだった。
- 証拠を握られながら手を出せず、捜査員は切歯扼腕した。
- 「あと一歩だったのに」と、彼は切歯扼腕の面持ちで席を立った。
類義語・関連語
「切歯扼腕」と同じく、怒りや悔しさが抑えきれない様子を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 悲憤慷慨(ひふんこうがい):
世の中の不正や自分の不運を嘆き、激しく怒ること。 - 地団駄を踏む(じだんだをふむ):
悔しさのあまり足を踏み鳴らすこと。 - 臍を噛む(ほぞをかむ):
取り返しがつかず、後悔しても届かない状態。
「切歯扼腕」と「悲憤慷慨」の違い
どちらも激しい感情を表しますが、向かう先が違います。
「切歯扼腕」は体の動きに出た悔しさそのものを指し、「悲憤慷慨」は世の中や社会に向けた憤りを言葉にすることを指します。
| 語句 | 向かう先 | 表れ方 |
|---|---|---|
| 切歯扼腕 (せっしやくわん) | 自分の無念 | 体の動き |
| 悲憤慷慨 (ひふんこうがい) | 世の中の不正 | 言葉・演説 |
対義語
- 泰然自若(たいぜんじじゃく):
何が起きても落ち着きを失わない様子。
英語表現
gnash one’s teeth
歯を食いしばる動作をそのまま表し、怒りや悔しさをこらえきれない様子に使う表現。
He could only gnash his teeth at the decision.
(彼はその判定に切歯扼腕するほかなかった。)
「扼」と「搤」、二つの字
『史記』の本文でこの語に使われている字は「扼」ではなく「搤」です。
どちらも手で強く押さえるという意味を持ち、古い書物では入れ替わって書かれてきました。
現在は「扼」と書くのがふつうです。
「扼」は「扼殺」「要扼」のように、押さえつける・急所を押さえるという意味で今も使われる字です。










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