意味
「積羽沈舟」とは、軽い羽根も大量に積み重なれば舟を沈めるほどの重みになるように、些細なことでも積もり積もれば大きな結果を招くという教えです。良い方向にも悪い方向にも使える言葉で、地道な積み重ねの成果を称える場合と、小さな油断や悪事の積み重ねを戒める場合の両方に用いられます。
- 積羽(せきう):積み重なった羽根。
- 沈舟(ちんしゅう):舟を沈めること。
語源・由来
「積羽沈舟」は、中国の戦国時代にまとめられた『戦国策』の魏策に登場する言葉です。秦の使者であった張儀は、諸国がそれぞれ個別に秦と同盟を結ぶ「連衡策」を説くため、魏の王のもとを訪れました。
その説得の中で張儀は、羽根も積もれば舟を沈め、軽い荷も束になれば車の軸を折り、大勢の声は金属さえ溶かすという趣旨の言葉を用い、小さな力の積み重ねを侮ってはならないと王に説きました。この一節から、些細なことの蓄積が大きな結果につながるという意味で「積羽沈舟」が使われるようになりました。
使い方・例文
「積羽沈舟」は、地道な積み重ねの大切さを説く場面や、逆に小さな油断が積み重なる怖さを戒める場面で使われます。
- 積羽沈舟というとおり、日々の小さな練習の積み重ねが今の実力を支えている。
- その場しのぎの手抜きも積羽沈舟、いずれ大きな失敗を招くぞ。
類義語・関連語
「積羽沈舟」と同様に、小さなものの積み重ねが大きな力になることを表す言葉には、次のようなものがあります。
- 塵も積もれば山となる(ちりもつもればやまとなる):ごくわずかなものでも重なれば大きなものになるということ。
- 雨垂れ石を穿つ(あまだれいしをうがつ):小さな努力でも根気よく続ければ、いつか成果を得られるということ。
- 群軽折軸(ぐんけいせつじく):軽いものでも束になれば、車の軸を折るほどの重さになるということ。
「積羽沈舟」と「塵も積もれば山となる」の違い
どちらも小さなものの積み重ねを表しますが、使われる場面と含みが異なります。「積羽沈舟」は硬い文章の中で使われ、良い意味にも悪い意味にも使えるのに対し、「塵も積もれば山となる」は日常会話に広く根付き、主に努力や貯蓄など良い意味で使われます。
| 語句 | 使われる場面 | 良し悪しの含み |
|---|---|---|
| 積羽沈舟 (せきうちんしゅう) | 硬い文章や訓戒 | 良い意味にも悪い意味にも使う |
| 塵も積もれば山となる (ちりもつもればやまとなる) | 日常会話 | 主に良い意味(努力・貯蓄) |
英語表現
little strokes fell great oaks
小さな一撃でも重ねれば大木を倒せるという意から、地道な努力の積み重ねを表す表現。
Little strokes fell great oaks.
(小さな一撃も積み重なれば大木を倒す。)
the straw that broke the camel’s back
わずかな負荷の追加が限界を超えさせるという意から、小さな積み重ねが破綻を招く場面を表す表現。
It was the straw that broke the camel’s back.
(それが最後の一本、ラクダの背を折ったわらだった。)
三度重なる譬え
「積羽沈舟」は、単独の四字熟語としてではなく、本来は「群軽折軸」「衆口鑠金」と三つ並べて使われた言葉です。羽根が舟を沈め、軽い荷が車の軸を折り、大勢の声が金属さえ溶かす。異なる素材で同じ構造の譬えを三回重ねることで、聞き手に積み重ねの力を強く印象づける効果を持ちます。こうした対になる句を並べる技法は、中国の古典の弁論に広く見られる修辞の型です。日本語の「継続は力なり」のように一つの言い回しで語る表現とは対照的に、当時の説客は複数の譬えを畳みかける形を好んで用いました。










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