意味
「すべからく」とは、当然、ぜひともという意味の言葉です。
多くの場合「すべからく〜べし」の形で使い、そうするのが当然の義務であることを述べます。
「すべて」という意味だと誤解されることもあります。
語源・由来
この言葉は、漢文を訓読する中で生まれました。
「すべからく」は、漢字の「須く」の読み下しです。
サ変動詞「す」に、義務や当然を表す助動詞「べし」の活用形が付いた「すべかり」に、「〜すること」の意味を添える「く」が付いてできました。
「須く〜べし」の形で、ぜひともそうすべきだという意味を表す、決まった言い回しになりました。
唐の僧・道宣による戒律の注釈書『四分律行事鈔』を平安初期(850年ごろ)に訓読した記録に、すでにこの読みが見えます。
『徒然草』(1331年ごろ)にも「徳をつかんと思はば、すべからく、まづその心づかひを修行すべし」という一節があります。
使い方・例文
「すべからく」を使った文は、「べし」のほか、「べきだ」「べきである」で結ぶこともできます。
- 公共の場では、すべからく他人へ配慮すべし。
- 経営者たる者、すべからく従業員の暮らしに責任を持つべし。
- 人の上に立つ者は、すべからく部下の手本となるべきだ。
誤用・注意点
「すべからく」には「すべて、皆」という意味はなく、この意味で使うのは本来の用法から外れています。
本来の「すべからく」は「〜べし」「〜べきだ」で結び、そうするのが当然の務めであることを述べます。
次のように、起きた事実や物事の性質を述べる文で使うと、「すべて」の意味で使っていることになります。
間違った使い方
- 参加者はすべからく満足して帰った。
- この店の料理はすべからくおいしい。
文化庁の令和2年度「国語に関する世論調査」では、「学生はすべからく勉学に励むべきだ」という例文を示して意味を尋ねています。
本来の「当然、是非とも」を選んだ人は54.8パーセントでした。
一方で「すべて、皆」を選んだ人が32.1パーセント、両方の意味だと答えた人が9.1パーセントいて、合わせると4割を超える人が「すべて」の意味もあると考えていました。
「べきだ」で結ぶ本来の形の文でも、読み手の4割ほどには「すべて」の意味で伝わるおそれがあります。
類義語・関連語
この言葉と同じように、当然の義務を述べる言葉には、以下のようなものがあります。
- 当然:
もっともで、疑う余地が無いこと。 - 本来:
もとから、そうであるべき筋であること。
「すべからく」と類義語の違い
「すべからく」は漢文訓読から来た古い言い回しで、「当然」「本来」は日常語です。
| 語句 | 言葉としての性質 |
|---|---|
| すべからく | 「べし」と対で使う、漢文訓読由来の古い言い回し |
| 当然 | 単独で使える、日常的な名詞・形容動詞・副詞 |
| 本来 | 単独で使える、日常的な名詞・副詞 |
英語表現
英語では、次のような言い方でこの当然さを表します。
be incumbent on
それをするのが当然の務めだという、改まった言い方。
It is incumbent on a leader to take responsibility for the team.
(指導者たる者、すべからくチームに責任を持つべきです。)
ought to
そうするのが当然の道理だという義務を表す、より一般的な言い方。
Public officials ought to serve the people first.
(公職に就く者は、すべからく人々への奉仕を第一とすべきです。)
「須」は、もとは「ひげ」を表す字
「すべからく」に当てる「須」は、もともと顔のひげを表す字です。
字の形も、人の姿に、ひげを表す線「彡」を添えたものです。
「待つ」「求める」「すべからく」などの意味は、音の近い別の言葉を書き表すために「須」の字を借りたもので、ひげの意味から広がったものではありません。
「必須」の「須」や、わずかな間を表す「須臾」の「須」も、こうして借りた使い方です。
ひげの意味には、のちに「須」に髪を表す部分を加えた「鬚」の字が作られました。










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