意味
「犬馬の労(けんばのろう)」とは、目上の人のために力を尽くすことを、犬や馬程度の働きだとへりくだって言う言葉です。
自分の働きについて使い、他人の働きぶりをほめるのには使いません。
忠実に仕えようとする謙虚な姿勢を伝える、控えめな表現です。
- 犬馬(けんば):犬と馬。自分を犬や馬のような取るに足りない者にたとえて、へりくだる言い方。
- 労(ろう):心や体を使って働くこと。骨折り。
語源・由来
「犬馬の労」は、中国で古くから、主君に対して自分の働きをへりくだって示すときに使われてきた言い回しです。
二世紀末、後漢王朝の末期には、武将の曹操が、領地の加増を辞退するために皇帝へ差し出した上書の中で、次のように述べています。
犬馬の微労有りと雖も
(犬や馬程度のちょっとした働きはいたしましたが)
曹操はこのように自分の働きをつつましく示したうえで、功績は部下たちのおかげだと続けています。
使い方・例文
自分の働きについて使うのが基本で、目上の相手に対して「犬馬の労をとれ」のように行動を求める使い方はしません。
例文
- 上司への恩返しに、これから犬馬の労を尽くす所存です。
- 本当に恩義ある方のためなら、犬馬の労もいといません。
類義語・関連語
この言葉と同様に、身を尽くして働くことを表す言葉には、以下のようなものがあります。
「犬馬の労」と類義語の違い
いずれも身を尽くして働くことを表す言葉ですが、何に重きを置くかが異なります。
目上の人への忠誠を強調したい場面では「犬馬の労」が、労苦の大きさを伝えたい場面では「牛馬の労」が使われやすい言葉です。
対義語
この言葉とは反対に、力を尽くさない様子を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 無為徒食(むいとしょく):
何もしないでぶらぶらと遊び暮らし、ただ飯を食うこと。
英語表現
英語では、目上の人への忠実な奉仕を示す決まり文句が近い表現になります。
your obedient servant
かつて手紙の結びに使われた、相手への忠実な奉仕を示す言い回し。
I remain, sir, your obedient servant.
(謹んで、忠実な下僕としてお仕えいたします。)
『三国志演義』の孔明は三顧の礼に「犬馬の労」で応えた
元末から明初にできた小説『三国志演義』の第38回では、劉備が3度目に諸葛亮(孔明)の住まいを訪ねた場面に、この言葉が出てきます。
山を出て助けてほしいと頼まれた孔明は、はじめは断りますが、劉備が涙で袖をぬらすのを見て、「将軍が私を見捨てないとおっしゃるのなら」と前置きして、こう答えます。
願はくは犬馬の労を効さん
(どうか犬や馬ほどの働きをさせていただきたい)
孔明は自分の働きを犬や馬にたとえてへりくだりながら、劉備に仕えることを引き受けています。
演義のこの場面の「犬馬の労」は、主君に仕えると約束する返事の言葉として使われています。



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