意味
「洛陽の紙価を高める(らくようのしかをたかめる)」とは、書いた本がもてはやされ、よく売れるという意味です。
人々が争って書き写したために都の紙が値上がりした、という中国の話から、本の評判の高さをたとえて言います。
「洛陽の紙価を高からしむ」という形でも使われます。
- 洛陽(らくよう):晋の時代に都があった中国の町。
- 紙価(しか):紙の値段。
語源・由来
この言葉は、中国の歴史書『晋書』の「文苑伝」(= 文人の伝記を集めた巻)にある、左思の伝記から出ています。
三世紀、西晋の文人だった左思は、三国時代の魏・呉・蜀の都を描いた「三都賦」(= 三つの都をうたった長い韻文)を、十年かけて書き上げました。
ところが、できあがった当初は、世の人に重んじられませんでした。
そこで左思は、名高い学者の皇甫謐に作品を見せて序文を書いてもらい、ほかの学者たちも注釈を付けて、評判が高まっていきます。
決め手になったのは、司空(= 大臣の位)の張華の言葉でした。
次の一節が由来です。
司空張華見而歎曰:「班張之流也。使讀之者盡而有餘,久而更新。」於是豪貴之家競相傳寫,洛陽為之紙貴。
(司空の張華はこれを見て感嘆し、「班固や張衡(= どちらも賦で名高い先人)に並ぶ作だ。読み終えてもなお味わいが残り、時がたつほど新しく感じられる」と言った。こうして身分の高い家々が争って書き写し、洛陽ではそのために紙の値段が上がった。)
この「洛陽為之紙貴(洛陽これが為に紙貴し)」の一文が、言葉のもとになっています。
使い方・例文
- 新人作家のデビュー作は増刷が続き、洛陽の紙価を高めた。
- 恩師の書いた入門書は、刊行から半年で洛陽の紙価を高めるほどの評判を得た。
- 書評で取り上げられ、小さな出版社の歴史書が洛陽の紙価を高めることになった。
使うときの注意
「紙価」は紙の値段を指します。
同じ読みの「市価」(= 市場での値段)を当てて、「洛陽の市価を高める」と書くのは誤りです。
英語表現
sell like hot cakes
短い間に、次々と大量に買われていく様子を言う句。
Her first novel is selling like hot cakes.
(彼女の最初の小説は、洛陽の紙価を高めている。)
陸機、左思の賦に感服して筆をおく
左思の伝記には、この一節に続けて、同じころの文人陸機の話が書かれています。
陸機は都の洛陽に来たとき、自分も三都をうたう賦を作ろうと考えていました。
左思が書いていると聞くと、手を打って笑い、弟の陸雲への手紙に、できあがったら酒がめのふたにでもしよう、と書いたといいます。
その後のことは、次のように書かれています。
及思賦出,機絕歎伏,以為不能加也,遂輟筆焉。
(左思の賦が世に出ると、陸機はすっかり感服し、これ以上のものは書けないと考えて、ついに筆をおいた。)


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