意味
「利己主義」とは、何を選ぶにも自分の得や満足を優先し、他人や世の中の利益を二の次にする姿勢です。
その場限りのわがままではなく、生き方や価値観そのものとして根づいている点に、この言葉特有の重さがあります。
- 利己(りこ):自分の利益だけを図ること。
- 主義(しゅぎ):一貫した考え方や立場。
語源・由来
「利己主義」は、明治時代に西洋の倫理学における「エゴイズム」という概念を翻訳する中で定着した言葉です。
ジャーナリストの徳富蘇峰は、1886年に発表した評論『将来之日本』の中で、戦争に反対する態度の本質は平和を尊ぶ心ではなくエゴイズムにあるという趣旨を述べており、明治半ばにはすでにこの言葉が知識人の間で使われていたことがうかがえます。
西洋近代思想が流入し、個人の権利や自我のあり方が盛んに論じられるようになった時代の空気の中で生まれた、比較的新しい熟語です。
使い方・例文
「利己主義」は、個人の考え方や生き方の傾向を指摘する場面で使われます。
例文
- 彼の利己主義的な言動に、同僚たちは呆れ果てた。
- 環境問題は、一人ひとりの利己主義が招いた結果でもある。
- 極端な利己主義は、やがて周囲の信頼を失わせる。
- チームワークより利己主義を優先する社員が増えている。
類義語・関連語
「利己主義」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
「個人主義」は自分の権利を尊重する中立的な思想ですが、「利己主義」は他者の利益を犠牲にする点で意味合いが異なります。
対義語
「利己主義」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 利他主義(りたしゅぎ):
自分よりも他者の利益や幸福を優先する考え方。 - 滅私奉公(めっしほうこう):
自分を捨てて、組織や社会のために尽くすこと。
英語表現
egoism
利己主義
自分の利益や幸福を最優先する思想・態度を指す最も一般的な表現。
His decisions are always driven by egoism.
(彼の決断はいつも利己主義に基づいている。)
self-interest
自分の利益
思想というより、日常的な行動レベルでの「自分の得」を指す際に使われる表現。
She acted purely out of self-interest.
(彼女は純粋に利己主義から行動した。)
「利他主義」と対で作られた翻訳語
「利己主義」は、英語の”egoism”にあたる言葉として、対になる”altruism”(利他主義)とともに明治時代に作られた翻訳語です。
対になる「利他主義」については、明治10年代には「愛他心」、明治40年代以降には「愛他説」「愛他主義」「主他主義」など、複数の訳語が試された記録が残っています。
一つの言葉に落ち着くまでに、当時の翻訳者たちが訳語選びに苦心していたことがうかがえます。
翻訳によって生まれた言葉であるだけに、英語の”ego-ism”がもともと指していた範囲と、日本語の「利己主義」が指す範囲との間には、ずれが生じている場合があります。










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