意味
「傷弓の鳥」とは、一度手痛い失敗や恐怖を味わったことがきっかけで、ささいな物事にまで過敏になり、警戒心を抱いてしまう状態を表します。
中国の故事に基づく四字熟語で、失敗や恐怖の経験が人を過敏にさせる様子をたとえています。
- 傷弓(しょうきゅう):弓によって傷つけられること。
- 鳥(とり):弓で射られた経験を持つ雁などの鳥。
語源・由来
「傷弓の鳥」は、中国の戦国時代の書物『戦国策』の楚策にある故事に由来します。
魏の国に更羸(こうるい)という弓の名人がおり、弓に矢をつがえずに弦を鳴らしただけで、空を飛ぶ雁を落としてみせました。
驚く魏王に、更羸は「あの雁はかつて矢で射られた傷を持つ鳥です。
弦の音を聞いて怯え、高く飛び上がろうとした拍子に古傷が開き、落ちてきたのです」と説明したといいます。
この故事から、一度の痛手が長く心に影を落とし、わずかな刺激にも過敏に反応してしまう様子を表す言葉として使われるようになりました。
使い方・例文
「傷弓の鳥」は、過去の失敗や恐怖の経験から、必要以上に用心深くなった様子を表す場面で使われます。
- 一度の失敗以来、彼は傷弓の鳥のように慎重になった。
- 詐欺被害に遭って以来、傷弓の鳥の心境で契約を疑ってしまう。
- あの事故のあと、彼女は傷弓の鳥さながらに車を避けている。
類義語・関連語
「傷弓の鳥」と同じように、一度の失敗に懲りて用心深くなることを表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく):
一度の失敗に懲りて、必要以上に用心すること。
英語表現
once bitten, twice shy
「一度噛まれると、二度目は臆病になる」という意味の英語のことわざで、傷弓の鳥とほぼ同じ意味で使われる。
Ever since the deal fell through, he checks every contract twice—once bitten, twice shy.
(あの取引が破談になって以来、彼はどんな契約も二度確認する。まさに傷弓の鳥だ。)
戦国策に見る恐怖の鋭い観察眼
『戦国策』に記された更羸の逸話は、単なる弓の名人芸の話ではなく、恐怖という感情の鋭さを見抜いた観察に基づいています。
目に見える矢ではなく、弦の音というかすかな刺激だけで、古傷を抱えた雁が反応してしまう様子は、人間の心にも通じるものです。
強い恐怖や失敗の記憶は、当事者しか気づかないほどの些細なきっかけでもよみがえることがあり、この故事は二千年以上前から、そうした心の仕組みを言い当てていたといえるでしょう。











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