意味
「食言」とは、前に言ったことを取り消して、約束を守らないことを指します。
うっかり忘れたのではなく、自分の言葉をなかったことにするという含みがあります。
政治や交渉の場で相手を責めるときに使われ、口にすれば強い非難になります。
- 食(しょく):食べる。ここでは飲み込んで消すこと。
- 言(げん):口に出した言葉。約束。
語源・由来
「食言」は、口から出した言葉をもう一度食べてしまう、という組み立ての言葉です。
一度口から出した言葉を、また口に入れてしまう、という意味からきています。
言った事実ごと飲み込んで消してしまう、という見立てです。
中国の歴史書『春秋左氏伝』の哀公二十五年には、この言葉を使った皮肉なやりとりが残っています。
宴席で孟武伯が、魯の哀公の家臣郭重を「何と肥えていることか」とけなしました。
哀公は「是れ食言多し、能く肥ゆること無からんや」と返します。
お前こそ言葉を食べてばかりいるのだから、太らないはずがない、という切り返しでした。
使い方・例文
「食言」は、公の場でした約束が守られなかったことを責める場面で使われます。
- 選挙の公約を反故にするとは、まさに食言というほかない。
- 前回の合意を食言されては、これ以上交渉のしようがない。
- 大臣の答弁は、去年の説明の食言にあたるのではないか。
使うときの注意点
「食言」は硬い書き言葉で、日常会話ではあまり使いません。
新聞の政治面や国会の質疑など、責任を問う場面に偏って現れます。
また「食言する」という動詞の形も使われますが、うっかりした言い間違いには当たりません。
約束として重みのあった発言を取り消した場合に限って使うと、意味がはっきりします。
類義語・関連語
「食言」と同じく、約束や前言が守られないことを表す言葉には以下のようなものがあります。
- 二枚舌(にまいじた):
相手によって食い違うことを言い分けること。 - 空手形(からてがた):
実行するつもりのない、口先だけの約束。 - 朝令暮改(ちょうれいぼかい):
命令や方針が短い間に次々と変わること。
「食言」と「二枚舌」の違い
どちらも言葉が信用できないことを表しますが、崩れ方が違います。
「食言」は前の発言を取り消すという時間の前後の問題で、「二枚舌」は同じ時期に相手ごとに違うことを言う点を突きます。
| 語句 | 崩れ方 | 相手の数 |
|---|---|---|
| 食言 (しょくげん) | 前に言ったことを取り消す | 一人でも成り立つ |
| 二枚舌 (にまいじた) | 相手ごとに違うことを言う | 二人以上が要る |
対義語
「食言」とは反対に、口にしたことを必ず守る姿勢を表す言葉があります。
英語表現
go back on one’s word
自分の言葉を後戻りさせる、という意味で、約束を破ることを指す言い回し。
He went back on his word again.
(彼はまた食言しました。)
eat one’s words
言葉を食べる、と字面は食言と同じだが、前言の誤りを認めて撤回する意味で使う表現。
I had to eat my words after seeing the result.
(結果を見て、前言を取り消さざるを得ませんでした。)
字面が同じで意味がずれる英語
英語の eat one’s words は「食言」と同じ組み立てですが、指す中身が違います。
英語のほうは、自分の予想や主張が外れたと認めて取り消す場面で使われ、非難ではなく反省の言葉になります。
日本語の「食言」は約束を破った相手を責める語なので、直訳で置き換えると意味が反対側に寄ります。
約束の破棄を伝えるなら go back on one’s word が対応します。










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