意味
「朝霧は晴れ(あさぎりははれ)」とは、朝に霧が立ち込めても、日が高くなるころには晴れて良い天気になりやすいという言い伝えです。
濃い霧は視界を悪くして嫌われがちですが、霧が出ること自体は、前の晩から明け方にかけて空が晴れていたしるしでもあります。
こうした天気の言い伝えは「天気のことわざ」や「天気俚諺」(= 天気に関することわざ)とも呼ばれます。
語源・由来
この言い伝えと同じ内容は、隣国の農業に伝わる知恵としても記録されています。
1943年に東亜研究所が編訳した『支那農業気象俚諺集』には、中国の農村に伝わる言葉として次のように記されています。
朝霧は晴れ、晩霧は曇り。
朝に出る霧は晴れの兆し、夕方から夜にかけて出る霧は曇りの兆しという、時間帯によって正反対の意味を持たせている点が特徴です。
稲や麦の生育が天候に大きく左右される農村では、朝晩の空模様を読み分ける知恵が代々受け継がれてきたと考えられます。
霧が朝に消えて晴れる仕組み
朝霧が出るのは、気象学で放射霧と呼ばれる現象です。
よく晴れて風の弱い夜は、地面から出ていく熱が雲にさえぎられずに空へ逃げていきます。
この冷え方を放射冷却といい、地面近くの空気が冷やされて水蒸気が細かな水滴に変わることで霧が発生します。
気象庁の管区気象台がまとめた1966年の報告書には、1965年10月22日の朝、福岡県大牟田市付近で放射霧が発生して視界が5メートルほどまで悪くなり、列車のダイヤが乱れたという記録が残っています。
放射霧は雲のない晴れた夜でなければ発生しないため、朝に霧が出ていること自体が、前の晩の空が澄んでいたことのしるしになります。
日が昇って地面が温まるにつれて、霧は少しずつ薄れて消えていきます。
使い方・例文
この言葉は、朝に霧が出て予定を迷ったときに、決行してよいと後押しする一言として使われます。
例文
- 「今朝は霧が深いね。でも朝霧は晴れというし、午後は大丈夫でしょう。」
- 朝霧は晴れのとおり、昼にはすっきりとした青空になった。
類義語・関連語
「晴れの兆し」を表す言い伝えとして、露に注目したものもあります。
- 朝露が降りると晴れ(あさつゆがおりるとはれ):
朝に露がたくさん降りていると、その日は晴れやすいという言い伝え。
英語表現
英語には、霧と好天を結びつけた言い伝えがあります。
A summer fog is for fair weather
意味:夏の霧は晴天の証。
霧が出ること自体を悪天候の前触れではなく、穏やかな晴天の一部として捉える表現。
A summer fog is for fair weather.
(夏の霧は晴天の証である。)
霧を「晴れの兆し」と記した気象台の初代長官
霧を晴れの兆しとする考え方は、海を越えたイギリスにも記録が残っています。
1869年にリチャード・インワーズがまとめた気象ことわざ集『Weather Lore』には、後にイギリス気象庁の前身となる部門を築いたロバート・フィッツロイの言葉として「Dew is an indication of fine weather; so is fog.(露は晴れの兆しであり、霧もまた同じである。)」という一節が収められています。
フィッツロイは、チャールズ・ダーウィンを乗せた測量船ビーグル号の艦長を務めた人物で、後年は気象観測の体制づくりに取り組み、「フォーキャスト(forecast)」という言葉を天気予報の意味で初めて使ったことでも知られています。
船乗りとして長く海と空を読み続けてきた人物が、霧を晴れの兆しとして書き残していたことになります。










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