意味
「比翼の鳥(ひよくのとり)」とは、雌雄がそれぞれ目と翼を一つずつしか持たず、二羽がそろって初めて空を飛べるという、中国に伝わる空想上の鳥を指します。
一方だけでは飛べないという言い伝えから、片時も離れず支え合う夫婦や恋人の仲のよさをたとえる言葉として使われます。
語源・由来
「比翼の鳥」は、中国最古の辞書とされる『爾雅』の「釈地」篇に、次のように登場します。
南方有比翼鳥焉,不比不飛,其名謂之鶼鶼
(南方に比翼鳥という鳥がいる。つがいでなければ飛べず、その名を鶼鶼という。)
『爾雅』の注には、目も翼も一つずつしか持たず、二羽が一体となって初めて飛ぶ、と説明されています。
唐代の詩人白居易は、玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋を描いた長編詩『長恨歌』で、次のように詠みました。
在天願作比翼鳥,在地願為連理枝
(天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝となりたい)
この一節が広まったことで、「比翼の鳥」は男女の深い情愛を象徴する存在として知られるようになり、「連理の枝」と組み合わせた四字熟語「比翼連理」も生まれました。
「比翼連理」については、以下の記事で詳しく解説しています。
使い方・例文
「比翼の鳥」は、「比翼の鳥のような」「比翼の鳥にたとえられる」のように、ほかの言葉と組み合わせて、夫婦や恋人の仲のよさを言い表すときに使います。
- 金婚式を迎えた二人は、まさに比翼の鳥のような夫婦だ。
- 祖父母は比翼の鳥さながら、片時もそばを離れない。
- 彼らの深い絆は、比翼の鳥にたとえられるほど固く結ばれている。
類義語・関連語
この言葉と同様に、夫婦や恋人の深い結びつきを表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 比翼連理(ひよくれんり):
「比翼の鳥」と「連理の枝」を合わせ、男女の情愛の深さを表す四字熟語。 - 鴛鴦の契り(えんおうのちぎり):
鴛鴦(おしどり)のつがいのように、夫婦仲がむつまじいことのたとえ。 - 偕老同穴(かいろうどうけつ):
夫婦がともに老い、死後も同じ墓に葬られるという固い約束。
「比翼の鳥」と「比翼連理」の違い
どちらも仲むつまじい男女のたとえとして使います。
「比翼の鳥」は鳥ひとつでたとえる言い方で、「比翼連理」は『長恨歌』で対にされた「連理の枝」と合わせた四字熟語です。
| 語句 | たとえに使うもの | 意味 |
|---|---|---|
| 比翼の鳥 (ひよくのとり) | 雌雄が一体となって飛ぶ空想上の鳥 | 夫婦や恋人の仲がむつまじいこと |
| 比翼連理 (ひよくれんり) | 比翼の鳥と連理の枝 | 男女の情愛が深く、仲むつまじいこと |
英語表現
英語では、lovebirdsという表現が近いニュアンスを持ちます。
lovebirds
仲のよさを隠さない恋人や夫婦を指す表現。
もとは、つがいの仲のよさで知られる小型のインコ(ボタンインコの仲間)のこと。
They have been lovebirds since the day they met.
(二人は出会った日から、比翼の鳥のように仲むつまじい。)
爾雅は、比翼の鳥の隣に「比目魚」も記す
『爾雅』は「南方に比翼鳥がいる」と記す直前に、東方の生き物として比目魚を挙げています。
二匹が並ばなければ進めないと記された、比翼の鳥と同じ発想の魚です。
このあと西方の比肩獣、北方の比肩民と、名に「比」(並ぶ)の字を持つ生き物や人が続き、中央の蛇を挙げたうえで、次のように締めくくっています。
此四方中國之異氣也
(これらは四方と中央の地の、変わった気の現れである)
比翼の鳥は単独の伝説ではなく、東西南北の方角ごとに、並んで一体となる生き物を挙げた一節の中に記録されていました。



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