囲碁で実力の劣る側が先に盤上へ石を一つ置いてから対局を始める、そんな謙譲の作法から生まれたのが、「一目置く」(いちもくおく)です。
意味
一目置くとは、自分より優れた相手の実力を認め、敬意を払うことという意味です。
単なる評価にとどまらず、一歩身を引いて相手を立てるような謙虚な態度を伴うのが特徴です。
- 一目(いちもく):碁石一個分のハンデ。
- 置く(おく):先に石を盤上に配置すること。
語源・由来
一目置くは、囲碁の対局で実力差があるとき、弱い側が先に石を一つ置いてハンデをつけてから始める「置き碁」という作法に由来します。
囲碁は先に石を置いた側が有利になりやすいため、格上の相手と対局する際、格下の側が敬意を込めて先に石を置くことで実力差を埋めていました。
この盤上の作法が転じて、相手の実力を認めて一歩譲る態度全般を指す言葉として使われるようになりました。
使い方・例文
一目置くは、周囲が特定の人物の実力や人柄を認め、一歩下がって敬意を払う場面で使われます。
- 新入社員ながら、彼の発想力には皆が一目置いている。
- あの先輩の技術力には、ベテランたちも一目置く。
- 冷静な判断力で、チーム内でも一目置かれる存在だ。
類義語・関連語
一目置くと同様に、相手の実力を認めて敬う気持ちを表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 敬意を払う(けいいをはらう):相手を尊重し礼を尽くすこと。
- 脱帽する(だつぼうする):相手の実力に完全に降参すること。
対義語
一目置くとは反対に、相手を軽んじる態度を表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 見下す(みくだす):相手を自分より劣ると軽んじること。
英語表現
have a lot of respect for
相手の能力や人柄を高く評価し、敬意を抱いていることを伝える表現。
I have a lot of respect for her negotiation skills.
(彼女の交渉力には一目置いている。)
look up to
「〜を尊敬している」という意味の表現で、能力や人柄を認めて敬う気持ちを伝える際に使われるフレーズ。
Everyone looks up to him as a leader.
(誰もが彼をリーダーとして一目置いている。)
囲碁から生まれた日本語たち
日本語には囲碁を語源とする言葉が数多く残っています。
物事の基本となる手順を指す「定石」、将来に備えて先に手を打つ「布石」、勝負にならないほどの差を意味する「駄目」なども、もとは囲碁の専門用語でした。
将棋や相撲など他の勝負事に由来する言葉と並び、囲碁は日本語の語彙に大きな影響を与えた文化のひとつです。
江戸時代には囲碁が武家や町人の間で広く親しまれ、対局の場で交わされた言葉が日常会話に浸透していったと考えられています。









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