意味
「進退両難(しんたいりょうなん)」とは、先へ進む道もふさがれ、かといって引き下がる道もなく、どうにも動きが取れなくなってしまうという意味です。
単なる状況の停滞ではなく、どちらの選択も裏目に出かねない、追い詰められた心情を伴って使われます。
- 進退(しんたい):進むことと退くこと。
- 両難(りょうなん):どちらも難しいこと。
語源・由来
「進退両難」は「進退、両つながら難し」と読み下せる組み立てで、進むことと退くことのどちらも難しい状態を四字で言い表しています。
中国の辞書は、唐の名将李靖の兵法の一節「進退又た難し」(= 進むのも退くのもまた難しい)を出典に挙げていますが、そこにある形は四字そのままではありません。
四字の形は、明代の歴史小説『三国志演義』の諸葛孔明のせりふなどに見え、日本では幸田露伴の小説『露団々』(1889年)に使われています。
同じ苦境を表す四字熟語に「進退維谷」もありますが、こちらは中国最古の詩集『詩経』の「人亦有言、進退維谷(人もこう言っている、進むも退くも谷まると)」という一節に由来する、生まれの異なる言葉です。
使い方・例文
「進退両難」は、経営判断や人間関係のもつれなど、どちらを選んでも状況が悪化しかねない場面で使われます。
- 撤退すれば違約金、続行すれば赤字拡大。まさに進退両難の状況だ。
- 上司の指示と現場の実情の板挟みで、彼は進退両難に陥っていた。
類義語・関連語
「進退両難」と同じく、身動きが取れなくなった苦しい状況を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 進退維谷(しんたいいこく):
進むことも退くこともできず、どうにもならない窮地。「谷」は「谷まる」と読む。 - 八方塞がり(はっぽうふさがり):
どの方角に向かっても、道が閉ざされている状態。 - 進退窮まる(しんたいきわまる):
前進も後退もできず、どうにもならない窮地に陥ること。
「進退両難」と「進退維谷」の違い
どちらも動きが取れない苦境を表しますが、生まれた経緯が異なります。
「進退維谷」が『詩経』の一節そのままの四字で、より古い言葉であるのに対し、「進退両難」は出典に挙げられる唐の兵法の一節では「進退又た難し」の形です。
| 語句 | 由来 |
|---|---|
| 進退両難 (しんたいりょうなん) | 唐の兵法の「進退又た難し」が出典とされる(四字そのままではない) |
| 進退維谷 (しんたいいこく) | 『詩経』の一節に由来する言葉 |
英語表現
in a bind
直訳は「縛られた状態」。
身動きが取れず、どうにも対処のしようがない苦しい立場を表す表現。
After losing its biggest client, the company found itself in a bind.
(最大の取引先を失い、会社はまさに進退両難に陥った。)
backed into a corner
直訳は「隅に追い詰められた」。
逃げ場がなく、厳しい選択を迫られる状況を表す表現。
With no allies left, the senator felt backed into a corner.
(味方を失った議員は、進退両難に追い込まれた気分だった。)
城攻めの兵は、退けば味方の将に追い立てられた
出典に挙げられる一節は、唐の杜佑が801年にまとめた制度の書『通典』の、城を守る方法を述べたくだりに残っています。
城を攻める兵は、矢や石を防ぐかぶり物で上が見にくく、鎧も厚く重いので、「進退又た難し」だと書かれています。
前へ出ても城壁に上れず、退けば自分たちの将に追い立てられ、城壁の下で押し合いになるというのです。
守る側はそこを狙い、城壁の上から滑車で鉄の鉤を下ろし、人が固まった所へ投げ落として払いのけよ、と続きます。
退けない理由は敵ではなく味方の将で、前は城壁、後ろは自軍という、文字どおりの板挟みです。









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