意味
「陰陽師身の上知らず」とは、他人の吉凶を占う陰陽師でも、自分自身の運命までは見通せないということを表すことわざです。
人のことはよく分かっても、自分のこととなると案外気づけないものだという、皮肉を込めた戒めとしても使われます。
- 陰陽師(おんようじ):占いや吉凶の判断を仕事にした、古代日本の専門家。
語源・由来
「陰陽師身の上知らず」は、他人の運命を占う陰陽師が、自分の将来は分からないという皮肉から生まれたことわざです。
江戸時代にはすでにこの言い回しが使われていたとみられ、陰陽師と同じように他人の運勢を占う易者を主人公にした「易者身の上知らず」ということわざも、同じ意味で使われています。
使い方・例文
「陰陽師身の上知らず」は、人のことにはよく気づく人が、自分のこととなると案外分かっていない場面で使われます。
- 他人の相談には的確な助言をする彼だが、陰陽師身の上知らずで恋愛には疎い。
- 経営コンサルタントの会社が倒産するとは、まさに陰陽師身の上知らずだ。
類義語・関連語
「陰陽師身の上知らず」と同様に、専門家が自分のこととなると案外だめだという皮肉を表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 紺屋の白袴(こうやのしろばかま):
染物屋が自分の袴は染めずに白いままでいるように、専門の技術を自分のためには使わないこと。 - 医者の不養生(いしゃのふようじょう):
医者が人には養生を勧めながら、自分の健康には無頓着でいること。
「陰陽師身の上知らず」と類義語の違い
3つとも専門家の皮肉を表しますが、「陰陽師身の上知らず」は自分の将来や運命を見通せないという知識の限界を指すのに対し、「紺屋の白袴」と「医者の不養生」は身につけた技術や知識を自分のために実行しないという行動の面を指します。
| 語句 | 専門家 | できないこと |
|---|---|---|
| 陰陽師身の上知らず (おんようじみのうえしらず) | 陰陽師 | 自分の運命を見通すこと |
| 紺屋の白袴 (こうやのしろばかま) | 染物屋 | 自分のために技術を使うこと |
| 医者の不養生 (いしゃのふようじょう) | 医者 | 自分の健康を守ること |
英語表現
Physician, heal thyself
「医者よ、自分自身を治せ」という聖書に由来する言い回しで、人には助言しながら自分のことは直せない様子を表す表現。
The financial advisor went bankrupt. Physician, heal thyself.
(あのファイナンシャルアドバイザーが破産するとは、皮肉なものだ。)
can’t see the forest for the trees
目の前のことに気を取られ、自分自身の全体像には案外気づけない様子を表す表現。
As a career coach, he can’t see the forest for the trees in his own life.
(キャリアコーチの彼も、自分自身のこととなると全体が見えなくなる。)
1696年の芝居にすでにあった皮肉
「陰陽師身の上知らず」という言い回しが確認できる古い例は、1696年に上演された浄瑠璃「弁慶京土産」にあります。
道行の場面に「おんやうじ身の上知らずと腹をかかへて笑ひけり」という一文があり、当時すでにこの言い回しが使われていたことが分かります。
陰陽師は、平安時代から江戸時代にかけて、星の動きや暦をもとに他人の吉凶を占うことを仕事にしていた人々です。
他人の運命を言い当てる専門家でありながら、自分自身の身の上については見通せないという矛盾が、当時から皮肉として面白がられていたことになります。
同じ構造を持つ言い回しとして「医者の不養生」「紺屋の白袴」なども江戸時代から使われており、専門家が自分のことになると案外だめだという皮肉は、繰り返し作られてきた型の一つです。









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