「孝行のしたい時分に親はなし」「石に布団は着せられず」「慈烏反哺」「昏定晨省」など、親孝行を表すことわざと四字熟語を集めました。
ことわざは「孝行は親が元気なうちに」「親を大切にする心得」「親の恩の深さ」の3つ、四字熟語は「親に尽くす」「恩に報いる」「親を思う気持ち」の3つに分けて、読みと意味を紹介します。
最後に、親孝行の一覧で見かけても意味の中心が別のところにある言葉を、注意点とあわせてまとめました。
もくじ
孝行は親が生きているうちに、と説くことわざ
- 孝行のしたい時分に親はなし(こうこうのしたいじぶんにおやはなし):
親のありがたさが分かり、孝行しようと思い立つ年ごろには、もう親はこの世にいないという嘆き。
親が元気なうちに大切にしておけ、という戒めとしても使う。江戸時代の川柳から広まった言葉。 - 石に布団は着せられず(いしにふとんはきせられず):
親が亡くなってからでは、孝行しようとしても間に合わないというたとえ。
「石」は墓石のこと。墓に布団をかけても、親を温めることはできないという意味から。 - 風樹の嘆(ふうじゅのたん):
孝行したいと思ったときには親がもう亡くなっていて、それがかなわないという嘆き。
「樹静かならんと欲すれども風止まず、子養わんと欲すれども親待たず」という句から出た言葉で、「風樹之歎」とも書く。 - 親孝行と火の用心は灰にならぬ前(おやこうこうとひのようじんははいにならぬまえ):
親孝行は親の存命中に、火の用心は火事を出す前にしておかないと手遅れだということ。
亡くなった親を火葬したあとの灰と、火事で焼けたあとの灰とを掛けている。
親を大切にする心得を表すことわざ
- 孝は百行の本(こうはひゃっこうのもと):
親孝行は、人のあらゆる善い行いの土台になるということ。
「百行」はすべての行いのこと。「孝は百行の基」ともいう。 - 身体髪膚、これを父母に受く(しんたいはっぷこれをふぼにうく):
自分の体は、髪の毛や皮膚の一つ一つまで父母から授かったものだという教え。
儒教の書物『孝経』の言葉で、この体を傷つけずに守ることが孝行の始まりだと続く。 - 親には一日に三度笑って見せよ(おやにはいちにちにさんどわらってみせよ):
いつも笑顔で親に接することも、大切な孝行の一つ。 - 子にすることを親にせよ(こにすることをおやにせよ):
わが子をいつくしむのと同じ心で、親にも尽くしなさいということ。
義理の親子のあいだで言うことが多い。 - 鳩に三枝の礼あり、烏に反哺の孝あり(はとにさんしのれいあり、からすにはんぽのこうあり):
鳥でさえ親を敬い恩を返すのだから、人も礼と孝行を大事にしなければならないという教え。
子の鳩は親鳥より三本下の枝にとまり、烏は育ててもらったお返しに老いた親鳥へ口移しで餌を運ぶ、という言い伝えから。「鳩に三枝の礼あり」「烏に反哺の孝あり」と分けても使う。 - 声なきに聴き形なきに視る(こえなきにききかたちなきにみる):
親が言葉や態度に表す前にその気持ちをくみ取る、子としての親への仕え方。 - 大孝は終身父母を慕う(たいこうはしゅうしんふぼをしたう):
本当に孝行な人は、生涯を通じて父母を思い慕い続けるということ。
『孟子』の言葉で、五十歳になっても父母を慕った古代中国の聖天子舜をたたえたもの。 - 犬馬の養い(けんばのやしない):
親に衣食を与えて養うだけで、敬う心が伴わないこと。
それでは犬や馬を飼うのと変わらない、と孔子が戒めた『論語』の言葉から。
親の恩の深さを表すことわざ
- 子を持って知る親の恩(こをもってしるおやのおん):
自分が親になって子を育ててみて、はじめて親の苦労とありがたさが身にしみるということ。 - 父の恩は山よりも高く母の恩は海よりも深し(ちちのおんはやまよりもたかくははのおんはうみよりもふかし):
父母から受けた恩の大きさを、そびえる山と底知れない海にたとえた言葉。
父と母をまとめた「父母の恩は山よりも高く海よりも深し」の形もある。 - 親思う心にまさる親心(おやおもうこころにまさるおやごころ):
親が子を案じる心は、子が親を思う心よりずっと深いということ。
幕末の思想家、吉田松陰が処刑を前に家族へ書き送った歌から。 - 親の恩は子で送る(おやのおんはこでおくる):
親から受けた恩には、自分の子をしっかり育てることで報いるということ。
「送る」は恩を返す意。親孝行をしないまま終わった人の言い訳として使われることもある。 - 打つも撫でるも親の恩(うつもなでるもおやのおん):
子をたたいて叱るのも、なでてかわいがるのも、どちらも親の愛情から出たものだということ。
親に尽くすことを表す四字熟語
- 冬温夏凊(とうおんかせい):
冬は暖かく、夏は涼しく過ごせるように、親の暮らしに気を配って仕えること。
「凊」は涼しい意。 - 昏定晨省(こんていしんせい):
夜は親の寝床を整え、朝は機嫌や体の具合をうかがうというように、心を込めて親に仕えること。
「昏」は夕暮れ、「晨」は朝のこと。冬温夏凊と同じく、儒教の書物『礼記』の一節から出た言葉。 - 温凊定省(おんせいていせい):
親に孝行を尽くすこと。
冬温夏凊と昏定晨省を一つにした形で、暑さ寒さへの気配りと朝晩の世話をまとめていう。「定省温凊」ともいう。 - 扇枕温衾(せんちんおんきん):
夏は親の枕元を扇であおいで涼しくし、冬は自分の体で親の寝具を温めるような、手厚い親孝行のたとえ。
「衾」は掛け布団。「扇枕温被」ともいう。 - 斑衣之戯(はんいのたわむれ):
親に孝行の限りを尽くすことのたとえ。
古代中国の老莱子が、七十歳になっても幼い子が着る派手な着物を着て、親の前で戯れ、親に年を忘れさせようとした話から。「老莱斑衣」ともいう。 - 菽水之歓(しゅくすいのかん):
貧しい暮らしの中でも、できる限りの孝行をして親を喜ばせること。
「菽水」は豆と水のことで、粗末な食事を表す。 - 三牲之養(さんせいのよう):
手厚い食事で親を養うことで、広く親孝行をいう。
「三牲」は供え物にする牛・羊・豚のことで、ごちそうを表す。 - 養志之孝(ようしのこう):
親の思いをくみ取り、その望みがかなうように尽くす孝行。
「養志」は親の志を大切にして、その心を楽しませること。 - 全生全帰(ぜんせいぜんき):
親からもらった体を生涯傷つけずに守り通すことこそ、本当の孝行だということ。
親から欠けるところのない体で生んでもらったのだから、死ぬときまで傷つけずに保つべきだ、という考えから。 - 三釜之養(さんぷのよう):
少ない給料の勤めでも、それで親を養うことや、その喜び。
孔子の弟子の曽子が、給料の少なかった最初の仕官では親を養えて幸せだったが、高給を得た今は親が亡くなっていて悲しい、と語った話から。 - 烏鳥私情(うちょうのしじょう):
親孝行をしたいという自分の思いを、へりくだって言う語。
下の「慈烏反哺」と同じ、烏の言い伝えから。
親の恩と恩返しを表す四字熟語
- 慈烏反哺(じうはんぽ):
成長した子が、育ててもらった親の恩に報いて孝行を尽くすこと。
烏は大きくなると、ひなのころ口移しで餌をもらった恩を返して親鳥に餌を運ぶ、という言い伝えから。「反哺之孝(はんぽのこう)」ともいう。 - 三枝之礼(さんしのれい):
親を敬う礼儀を守り、孝行の心が厚いことのたとえ。
上の節の「鳩に三枝の礼あり」と同じ言い伝えから。 - 寸草春暉(すんそうしゅんき):
親から受けた恩はあまりに大きく、子のささやかな心ではとても報いきれないことのたとえ。
「寸草」は短い草で子の小さな心、「春暉」は春の日ざしで親の愛情を表す。唐の詩人孟郊の詩から。 - 顧復之恩(こふくのおん):
親が自分を育ててくれた恩。
「顧復」は、親がいつも子をふり返って気にかけること。 - 罔極之恩(もうきょくのおん):
どれほど報いようとしても果てしのない、父母から受けた恩。
「罔極」は限りがないこと。「ぼうきょくのおん」とも読む。
親を思う気持ち・孝行できない悲しみを表す四字熟語
- 哀哀父母(あいあいふぼ):
いたわしく、あわれに思われる父母。
苦労して育ててくれた父母の恩に何一つ報いられないまま親を亡くした子が、その悲しみを述べた言葉。中国の古い詩集『詩経』の一節から。 - 枯魚銜索(こぎょかんさく):
人の命は短くはかないので、親の存命中に孝行しなければならないということ。
縄に通してつるした干し魚は、長く保ちそうでも、すぐに虫がついて傷んでしまうことから。亡くなった両親を慕う意味でも使う。 - 齧指痛心(げっしつうしん):
親を思う孝行の心が厚いことのたとえ。
曽子は、母が家で指をかむと、出先でも胸騒ぎがして急いで帰ったという。 - 伯兪泣杖(はくゆきゅうじょう):
年老いた親の衰えに気づいて、嘆き悲しむこと。
漢の韓伯兪は、過ちを犯して母にむちで打たれたとき、ちっとも痛くないことから母の力の衰えを知って泣いた故事による。 - 望雲之情(ぼううんのじょう):
遠く離れた地で父母を思う気持ち。
唐の狄仁傑が赴任先で山に登り、遠くに浮かぶ雲を見て「あの雲の下に父母がいる」と語った話から。 - 白雲孤飛(はくうんこひ):
旅の途中で、遠くにいる親を思い出すことのたとえ。
青空にぽつんと浮かぶ白い雲を見て、その下に住む親を思って悲しむことから。上の「望雲之情」と近い意味。
親孝行の意味で使うと注意が要る言葉
親や孝行の字を含んでいても、意味の中心が別のところにある言葉です。
親への感謝や孝行の気持ちを伝える場面で使うと、伝わる内容がずれます。
- いつまでもあると思うな親と金(いつまでもあるとおもうなおやとかね):
親はいつか亡くなり、お金も使えばなくなるのだから、頼り切らずに自立し、無駄遣いを慎めという戒め。
親孝行を勧める言葉ではないので、「親が元気なうちに孝行を」という意味で選ぶと向きがずれる。 - 親の心子知らず(おやのこころこしらず):
親が子を思う気持ちは子に伝わらず、子は好き勝手に振る舞うものだということ。
親の愛情と子の無理解をいう言葉で、子の側の孝行を表すものではない。 - 家貧しくして孝子顕る(いえまずしくしてこうしあらわる):
苦しい境遇のときにこそ、立派な人が現れて目立つものだということ。
家が貧しいと子も働いて親を助けるので、その孝行ぶりが人目につくことから。裕福な家からは孝行な子が出ない、という意味ではない。四字で「家貧孝子」ともいう。 - 忠孝両全(ちゅうこうりょうぜん):
主君への忠義と親への孝行を、ともにまっとうすること。
親孝行だけでなく主君への忠義を含む言葉なので、親への思いだけを伝えたい場面には合わない。





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