意味
「山に笠雲がかかると雨(やまにかさぐもがかかるとあめ)」とは、山の頂上に笠のような形の雲がかかると、まもなく雨が降る前触れだという意味です。
独立した高い山ほど笠雲ができやすく、日本では特に富士山の笠雲がよく知られています。
こうした天気の言い伝えは「天気のことわざ」や「天気俚諺」(= 天気に関することわざ)とも呼ばれます。
語源・由来
山の頂上にだけ雲がかかる現象そのものは、昔から登山者や周辺に暮らす人々のあいだで、天気を知る目印として使われてきました。
大正2年(1913年)刊行の登山案内書『富士登山之栞』には「富士山頂の笠雲」という言葉が登場し、当時すでに富士登山者のあいだで笠雲が話題になる雲だったことがうかがえます。
静岡県沼津測候所がまとめた『静岡県気象略報』には、大正10年(1921年)分をはじめ複数年にわたって「富士山ノ笠雲ト天候」という項目があり、笠雲の観測が気象台の実際の記録として残されています。

(写真:Muramasa、Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0)
笠雲ができる仕組み
笠雲は、強い風が山にぶつかり、湿った空気が斜面に沿って上昇して冷えることで、山頂付近だけに帽子のような雲ができる現象です。
山を越えて風下側に空気が吹き下りると、その空気は圧縮されて温まるため、風下側では雲が消えます。
こうして雲は山頂の風上側だけにとどまり、独特の形になります。
笠雲は上空の風が強く湿度が高いときにできるため、低気圧や前線の接近を告げるサインとして扱われています。
使い方・例文
例文
- 「山に笠雲がかかると雨」というし、今日の登山は中止にしよう。
- ガイドが富士山を指さし「笠雲がかかると雨が近い」と教えてくれた。
- 山小屋の主人は山に笠雲がかかると雨だと言い、早めの下山を勧めた。
類義語・関連語
空や山の様子から天気を読み取る観天望気には、この言葉と近いものが他にもあります。
- 月に暈がかかると雨(つきにかさがかかるとあめ):
月の周りに光の輪ができると、雨が近いとする言い伝え。 - 星が瞬くと風か雨(ほしがまたたくとかぜかあめ):
星の光が瞬いて見えると、風や雨が近いとする言い伝え。 - 飛行機雲が消え残ると雨(ひこうきぐもがきえのこるとあめ):
飛行機雲が消えずに残ると、雨が近いとする言い伝え。
天気にまつわる言い伝えは、以下の記事にもまとめています。
英語表現
When the mountains wear hats, rain’s on the way
山に雲の帽子がかかると雨が近いとする、アメリカ・アパラチア山脈周辺で語り継がれてきた天気の言い伝え。
強い風と湿った空気が山にぶつかって山頂にできる、日本の「笠雲」と同じ仕組みの雲を指している。
Old-timers here still say, when the mountains wear hats, rain’s on the way.
(この土地の年配の人たちは今でも、山が帽子をかぶったら雨が近いと言う。)
南アフリカでは「テーブルクロス」と呼ばれる同じ雲
山の頂に雲の帽子がかかるという現象は世界の高い山でも見られ、それぞれの土地で違う名前がつけられています。
南アフリカのケープタウンにあるテーブルマウンテンでは、山頂を覆う雲が「テーブルクロス」と呼ばれています。
この雲は、強い南東の風(現地で「ケープドクター」と呼ばれる風)が山にぶつかって冷やされ、湿気が凝結して厚い雲になり、山を越えて吹き下りるときに乾いて雲が消えるという、富士山の笠雲と同じ仕組みで生まれます。
地元には、この山のふもとに住んでいたという海賊ヤン・ファン・フンクスが、正体不明の喫煙仲間と勝負をしたところ、その相手が悪魔で、二人の吐く煙が山を覆いつくしたという言い伝えも残っています。
後世に語られてきた話ですが、この雲が土地の名物として親しまれてきたことをうかがわせます。
同じ「山にかかる雲」という自然現象でも、その土地によって呼び名も言い伝えも違ってくるのは興味深い点です。











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