意味
「割愛する(かつあいする)」とは、惜しいと思うものを、思い切って省いたり手放したりするという意味です。
ただ要らないものを削るのではなく、本当は残したいという気持ちがあることが前提になっている言葉で、そこが「省略する」との分かれ目になります。
- 割(かつ):切り離す。断ち切る。
- 愛(あい):手放しがたいと思う執着の心。
語源・由来
この言葉は、もともと仏教から来ています。
仏教でいう「愛」は、現代語のような温かい感情ではなく、物や人に強くとらわれる心を指しました。
修行に入る者が、肉親への情や身のまわりの持ち物への執着を断ち切ることを「愛を割く」と言い表したのが「割愛」です。
断ち切る相手が大切なものであるほど重みが増す言葉で、やがて仏教の場を離れ、惜しいと思うものを手放す意味で広く使われるようになりました。
使い方・例文
多くの場合「紙数の都合で」「時間の都合で」のように理由を添え、外すことを断る形で使われます。
- 紙数の都合で、詳しい経緯は割愛する。
- 前置きは割愛して、本題から入らせていただきます。
- 長年集めた蔵書だが、引っ越しを機に半分を割愛した。
「不要だから省く」という受け取り方が多数派
本来の「割愛する」には、惜しむ気持ちが含まれています。
ところが実際には、単に要らないものを切り捨てる意味で受け取る人のほうが多くなっています。
文化庁の令和3年度「国語に関する世論調査」では、「説明は割愛した」の「割愛する」を「不必要なものを切り捨てる」という意味だと答えた人が65.3パーセント、本来の「惜しいと思うものを手放す」と答えた人が23.7パーセントでした。
惜しくないものを削るときは「省略する」を使うと、言葉の重みと中身がそろいます。
類義語・関連語
この言葉と同じように、内容の一部を外すことを表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 省略する(しょうりゃくする):
簡単にするために一部を省くこと。 - 中略(ちゅうりゃく):
文章の途中を省いて示すこと。 - 断念する(だんねんする):
望みを思い切ってあきらめること。
「割愛する」と「省略する」の違い
どちらも一部を外すことを表すため入れ替えて使われがちですが、外すものをどう思っているかが違います。
惜しむ気持ちがあれば「割愛する」、簡潔にするためなら「省略する」が合います。
| 語句 | 外すものへの気持ち | 合う場面 |
|---|---|---|
| 割愛する (かつあいする) | 惜しい、本当は残したい | 手放しがたいものを外すとき |
| 省略する (しょうりゃくする) | 特にない | 簡潔にするために外すとき |
英語表現
英語では、次のような語が近い意味になります。
omit
一部を外して示さないことを表す、最も一般的な語。
惜しむ気持ちまでは含まないので、それは文脈で補います。
I had to omit the details for lack of space.
(紙数の都合で、詳しい部分は割愛しました。)
養蚕の「割愛」は蛾を引き離す作業
「割愛」は、養蚕の現場では今も作業の名前として使われています。
交尾した蚕の蛾は固く結びついたまま離れないため、一定の時間がたったところで人の手で雌と雄を引き離します。
この作業のことを「割愛」と呼びます。
宮内庁が公開しているご養蚕の用語集にも、「割愛」は「雌と雄を引き離すこと」として載っています。
農業の研究報告にも「蛾ひろい、交尾、割愛の省略が産卵に及ぼす影響」という題のものがあり、卵の数を左右する工程として扱われています。
愛を割く、という字面がそのまま作業の名前になっています。










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