意味
「カマキリが高く卵を産むと大雪(かまきりがたかくたまごをうむとおおゆき)」とは、カマキリが例年より高い場所に卵を産みつけた年の冬は雪が深くなるという言い伝えです。
これは「観天望気」(かんてんぼうき)と呼ばれる、身のまわりの自然の様子から天気を読み取る言い伝えの一つで、雪の多い地方で語り継がれてきました。
語源・由来
この言い伝えが語られてきたのは、冬になると雪が深く積もる地方です。
カマキリは秋になると、草の茎や木の枝などに卵鞘(= 卵をまとめて包んだ泡の塊)を産みつけ、卵はその中で春まで冬を越します。
卵鞘は一度ついたら動かないため、雪が積もれば、どこまでが雪の下に入り、どこから上が外に出ていたかがそのまま残ります。
雪の深さがその冬の暮らしを大きく左右する土地では、秋のうちに見通しを立てたいという思いが強くありました。
目につきやすい卵鞘の高さを雪の深さと結びつける見方は、そうした土地で受け継がれてきたと考えられています。
使い方・例文
この言葉は、秋に卵を見つけたときの話題として使われるほか、言い伝えが当たるかどうかそのものを話し合う場面でも登場します。
例文
- 祖父は庭木を見上げて、カマキリが高く卵を産むと大雪だとつぶやいた。
- 今年はカマキリの卵が高いから、雪かきのスコップを買い足しておこう。
- カマキリが高く卵を産むと大雪と言うが、去年は外れたと父は笑った。
科学的な検証
カマキリの雪予想と呼ばれるこの説は、一度は学問の裏づけを得たと受け取られました。
新潟県で40年近くカマキリの卵鞘を観測し続けた酒井與喜夫は、卵鞘の高さとその冬の最大積雪深のあいだに相関があると主張し、1997年に長岡技術科学大学から博士(工学)の学位を受けました。
2003年には『カマキリは大雪を知っていた』(農山漁村文化協会)を出し、テレビでも繰り返し紹介されたことで、この言い伝えは全国に広まりました。
その後、この説を正面から検証したのが、弘前大学名誉教授の安藤喜一です。
安藤の野外調査では、卵鞘が積雪より高い位置に産みつけられるという傾向は見られず、その高さは産卵場所の草丈や樹高と相関していました。
つまり卵鞘の高さを決めていたのは、その年の雪ではなく、カマキリが登った草や木の高さだったことになります。
さらに、雪の下に埋もれた卵鞘でも、卵は問題なく孵化することが実証されています。
雪に埋もれること自体が、カマキリにとって避けるべき事態ではなかったわけです。
安藤は2021年に『カマキリに学ぶ』(北隆館)を著し、これらの調査をもとに「カマキリの雪予想はありえない」と結論づけています。
弘前大学も同書の刊行にあたって、この本が広く知られた「カマキリの雪予想」の誤りを科学的な観点から指摘したものだと発表しました。
こうした反証は昆虫学の分野では15年ほど前から報告されてきましたが、一般には今も言い伝えのほうが広く知られています。
類義語・関連語
生き物の振る舞いから天気を読み取る言い伝えは、ほかにもいくつも残っています。
- 燕が低く飛ぶと雨(つばめがひくくとぶとあめ):
湿気で重くなった虫が低い所を飛び、それを追う燕も低空を飛ぶようになる様子。 - 蛙が鳴くと雨(かえるがなくとあめ):
湿り気が増すとアマガエルが活発に鳴き出すとされ、雨が近い合図として親しまれてきた言い伝え。 - 猫が顔を洗うと雨(ねこがかおをあらうとあめ):
湿気でひげの感じ方が変わり、顔をこする仕草が増えると言われてきた見方。
天気にまつわる言い伝えは、以下の記事にもまとめています。
新聞の一面を飾った冬の予報は、毛虫15匹分だった
虫に冬の寒さを尋ねる見方は日本だけのものではなく、アメリカには黒と茶色の帯を持つ毛虫の縞の幅で、その冬の寒さを占う言い伝えがあります。
1948年の秋、アメリカ自然史博物館で昆虫を担当していた学芸員のカランは、ニューヨーク郊外でこの毛虫を15匹集め、黒い帯と茶色い帯の長さを測りました。
茶色い帯が広いので暖かい冬になる、という見立ては学術誌ではなく新聞社に伝えられ、翌日の一面に載りました。
予想は当たり、この占いは秋のたびに話題にのぼるようになりました。
ただしカラン自身は、15匹という数が科学的な意味を持つには少なすぎることを承知していました。










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