孫子とは?中国古代の兵法書から生まれた故事成語8語

石積みの背景に「孫子の故事成語」の文字と特集の印 特集
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『孫子』は、『論語』『孟子』『荘子』『老子』『韓非子』『戦国策』『春秋左氏伝』『列子』『淮南子』と並ぶ中国古典でありながら、思想ではなく実戦のための知恵を説いた兵法書です。
風林火山、呉越同舟、虚虚実実といった言葉の多くが、この書物にたどり着きます。
まず『孫子』という書物の姿をたどり、そのうえで書物の記述とつながる言葉8語と、同書と同じ「百戦」を含む言葉1語をまとめました。

『孫子』とはどんな書物か

孫武という人物、女官たちを鍛えた逸話

孫武そんぶ(孫子、生没年不詳)は、斉の生まれで、のちに呉王闔閭こうりょに仕えた将軍・兵法家です。
『史記』によれば、闔閭こうりょは孫武そんぶが著した兵法十三篇を読んで感服し、実際に軍を指揮させてその力量を試そうとしました。
孫武そんぶは闔閭こうりょの後宮の女官180人を二隊に分け、闔閭こうりょお気に入りの側室二人を隊長に任命して訓練を始めましたが、女官たちは号令に従わず笑うばかりでした。
孫武そんぶは「指示が徹底していなかった自分の落ち度」として号令をやり直しましたが、それでも女官たちが笑ったため、今度は隊長二人を処刑しようとします。
闔閭こうりょが慌てて止めましたが、孫武そんぶは「一度将軍として軍を預かった以上、君命であっても従えないことがある」と述べて処刑を強行し、以後、女官たちは寸分たがわず号令に従うようになったと伝えられています。

十三篇の構成、孫臏兵法との混同と決着

『孫子』は、「計」「作戦」「謀攻」「形」「勢」「虚実」「軍争」「九変」「行軍」「地形」「九地」「火攻」「用間」の全13篇からなる、簡潔で体系立った兵法書です。
『史記』には、孫武そんぶの子孫とされる孫臏そんぴんという兵法家も登場するため、長らく『孫子』が孫武そんぶと孫臏そんぴんのどちらの著作か、あるいは後世の偽作かをめぐって議論が続いていました。
しかし1972年、山東省銀雀山ぎんじゃくざんの前漢時代の墓から、現行の『孫子』十三篇と、これとは別の『孫臏そんぴん兵法』の竹簡がともに出土したことで、両者は別人による別々の兵法書であることが確認され、議論に決着がつきました。

『孫子』に由来する故事成語8語

『孫子』に記された一節が、そのまま日本語の言い回しになったものを集めました。

戦いの心構え5語

  • 風林火山(ふうりんかざん):
    状況に応じて、速さ・静けさ・激しさ・不動の構えを使い分けよという兵法の教え。また、武田信玄の軍旗に記されたこの句の略称。
    「其の疾きこと風の如く、その徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し」という「軍争篇」の一節から。武田信玄が旗指物にこの原文を記したことで広く知られるようになった。
  • 正々堂々(せいせいどうどう):
    態度や手段が正しく、立派であること。
    「正々の旗を邀えることなく、堂々の陣を撃つことなし」(陣容が整然とし威風堂々とした敵には、むやみに攻撃を仕掛けてはならない)という「軍争篇」の一節から。
  • 虚虚実実(きょきょじつじつ):
    互いに手の内を探り合い、知略の限りを尽くして戦う様子。
    「虚」は備えのすき、「実」は堅い備えの意で、「虚実」を重ねて強めた語。『孫子』の「虚実篇」には「兵の形は実を避けて虚を撃つ」(相手の備えが堅い所を避けて手薄な所を攻める)とある。
  • 拙速(せっそく):
    できはよくないが、仕事が早いこと。
    『孫子』の「作戦篇」には「兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなり」(戦は拙くても速やかに終えた例は聞くが、巧みで長引いた例は見たことがない)とある。
  • 処女脱兎(しょじょだっと):
    初めはおとなしい動きで敵を油断させ、後には見違えるほど素早く動いて相手に防ぐ隙を与えないこと。
    「始めは処女の如く、敵人戸を開き、後は脱兎の如く、敵拒ぐに及ばず」という「九地篇」の一節から。

勝敗をめぐる教え3語

  • 呉越同舟(ごえつどうしゅう):
    仲の悪い者同士でも、共通の危機や目的の前では協力し合うこと。
    長年争ってきた呉と越の人が同じ舟に乗り合わせ、嵐に遭えば、互いの恨みを忘れて左右の手のように協力するはずだと説いた「九地篇」の一節から。
  • 百戦百勝(ひゃくせんひゃくしょう):
    戦うたびに、必ず勝つこと。
    「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり」(百回戦って百回勝つのは立派に見えるが、自軍にも損害が及ぶため最善とはいえない)という「謀攻篇」の一節から。戦わずして勝つことこそ最上とする孫子本来の主張とは裏腹に、後世では単純に無敵の強さを称える言葉として定着した。
  • 彼を知り己を知れば百戦して殆うからず(かれをしりおのれをしればひゃくせんしてあやうからず):
    敵の実情と自軍の実情の両方をよく知っていれば、何度戦っても危険はないということ。
    「彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず」という「謀攻篇」の一節から。

『孫子』と同じ「百戦」を含む言葉

次の言葉は『孫子』から生まれたものではありませんが、同書の「謀攻篇」にある「百戦百勝」「百戦して殆うからず」と同じ「百戦」を含みます。

  • 百戦錬磨(ひゃくせんれんま):
    数多くの実戦や経験を積んで、鍛え上げられていること。
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