易経とは?占いの原理を説く五経の筆頭から生まれた故事成語17語

石積みの背景に「易経の故事成語」の文字と特集の印 特集
スポンサーリンク

『易経』は、これまでの思想書や歴史書とは違い、占いの原理を説いた五経の一つです。
窮すれば通ず、虎視眈々、一陽来復といった言葉の多くが、この書物にたどり着きます。
まず『易経』という書物の姿をたどり、そのうえで書物の記述から生まれた言葉17語と、語源の一部にある言葉1語をまとめました。

『易経』とはどんな書物か

伏羲・文王・周公・孔子、四人の聖人による成立伝説

『易経』(『周易』とも)は、伝説上、四人の聖人の手を経て成立したとされています。
まず伝説の帝王伏羲ふくぎが「陰」と「陽」の組み合わせからなる8種類の基本図形「八卦」を考案し、これを2つずつ組み合わせた64種類の「六十四卦」に、周の文王ぶんおうが一つひとつの意味(卦辞)を付けたと伝えられています。
さらに文王ぶんおうの子である周公しゅうこうが、卦を構成する6本の線それぞれに意味(爻辞)を加え、最後に孔子が「十翼じゅうよく」と呼ばれる10篇の解説(繋辞伝・彖伝・象伝・文言伝など)を著したとされます。
現代の文献学では、十翼じゅうよくは孔子個人の作ではなく、戦国時代から前漢にかけて儒家の学派が段階的にまとめたものと考えられています。
孔子が晩年『易経』を愛読し、竹簡を綴じた革ひもが3度も擦り切れるほど読み込んだという「韋編三絶いへんさんぜつ」の逸話(『史記』孔子世家)は、この書物の奥深さを物語っています。

陰陽二爻が織りなす六十四卦の体系

『易経』の体系は、「陽」を表す一本線と「陰」を表す二本の短い線、この2種類の記号(爻)を3本重ねた「八卦」を土台にしています。
八卦どうしをさらに2つ組み合わせると、6本の線からなる「六十四卦」ができあがります。
それぞれの卦には、自然現象や人事になぞらえた意味と、吉凶を占うための言葉(卦辞・爻辞)が付けられており、これをもとに未来を占うのが本来の使い方でした。
同時に、変化や対立、調和といった宇宙の根本原理を説く哲学書としての性格も強く持ち、儒教の基本経典「五経」(易経・書経・詩経・礼記・春秋)の筆頭に数えられています。

『易経』に由来する故事成語17語

『易経』の卦辞・爻辞や、それを解説した「十翼じゅうよく」の一節が、そのまま日本語の言い回しになったものを集めました。

同類が引き合う理2語

  • 類を以て集まる(るいをもってあつまる):
    性質の似たものどうしは、自然と寄り集まるということ。
    「方は類を以て聚まり、物は群を以て分かる」という「繋辞上伝」の一節から。
  • 類は友を呼ぶ(るいはともをよぶ):
    気の合う者どうしは、自然と集まってくるということ。
    前項と同じ「繋辞上伝」にある「方は類を以て聚まり、物は群を以て分かたる」という記述が直接の出典と考えられている。

危険と警戒をめぐる4語

  • 虎の尾を踏む(とらのおをふむ):
    非常に危険な行いをすることのたとえ。
    「虎の尾を履むも、人を咥わず、亨る」(虎の尾を踏んでも、かみつかれない)という「履り」の卦の一節から。原文では、占いの結果は吉とされている。
  • 虎視眈々(こしたんたん):
    機会をうかがい、鋭い眼光で狙いを定めている様子。
    「虎視眈眈、其の欲逐逐たり」(虎が獲物をじっと見つめ、その欲するものを次々に追い求める)という「頤い」の卦の一節から。
  • 羝羊触藩(ていようしょくはん):
    勢いにまかせて無理に進もうとして、身動きが取れなくなること。
    「羝羊、藩に触れ、退くこと能わず、遂ぐること能わず」(牡羊が角を垣根に引っ掛け、進退窮まる)という「大壮」の一節から。
  • 亢竜悔いあり(こうりょうくいあり):
    栄達をきわめた者は、必ず衰えるというたとえ。
    「亢竜悔い有り」(天に昇りつめた竜は、あとは下るだけなので悔いがある)という「乾」の上九の爻辞から。

行き詰まりからの転換2語

  • 窮すれば通ず(きゅうすればつうず):
    行き詰まった状況も、極まれば必ず打開の道が開けるということ。
    「窮すれば則ち変じ、変ずれば則ち通じ、通ずれば則ち久し」という「繋辞下伝」の一節から。
  • 一陽来復(いちようらいふく):
    悪いことが続いたあと、ようやく物事が良い方向に向かうこと。
    陰の気が極まる冬至を表す卦「地雷復」が、底から一つの陽が生まれてくる形をしていることから。冬至を境に太陽の力が再び強まっていく様子にちなむ。

変化と人柄をめぐる3語

  • 君子は豹変す(くんしはひょうへんす):
    優れた人物は、過ちに気づけばはっきりと態度や考えを改めるということ。
    「君子豹変、小人革面」(君子は豹の毛皮の模様のようにはっきりと過ちを改めるが、小人は表面だけを取り繕う)という「革卦」の一節から。
  • 内柔外剛(ないじゅうがいごう):
    内心は気が弱いのに、外見や態度は強そうに見えること。
    「内柔にして外剛」という「否」の卦にある記述から。
  • 自彊不息(じきょうふそく):
    みずから努め励み、少しも怠らないこと。
    「天行は健なり、君子以て自ら彊めて息まず」(天の運行がたゆみなく巡り続けるように、君子もみずから努め励み続ける)という「乾」の象伝の一節から。

積み重ねの理2語

  • 一朝一夕(いっちょういっせき):
    わずかな期間のこと。多く、打ち消しの語を伴い、物事が短い期間では成し遂げられないという意味で使う。
    「臣にしてその君を弑し、子にしてその父を弑するは、一朝一夕の故にあらず」(大事は、ある日突然起きるものではない)という「坤・文言伝」の一節から。
  • 積善の家には余慶あり(せきぜんのいえにはよけいあり):
    善い行いを積み重ねた家には、その報いとして子孫にまで幸福が及ぶということ。
    「積善の家には必ず余慶あり、積不善の家には必ず余殃あり」という、前項と同じ「坤・文言伝」の一節から。

結びつきと資質をめぐる4語

  • 断金の交わり(だんきんのまじわり):
    金属をも断ち切るほど、固く結ばれた友情のこと。
    「二人同心、その利は金を断つ」(二人が心を同じくすれば、その鋭さは金属をも断ち切る)という「繋辞上伝」の一節から。『三国志』の注に引かれた『江表伝こうひょうでん』は、孫策と周瑜しゅうゆの交わりを「義は断金に同じ」と記している。
  • 雲は竜に従い、風は虎に従う(くもはりゅうにしたがい、かぜはとらにしたがう):
    優れたリーダーのもとには、自然とそれにふさわしい人材が集まるということ。
    「同声相応じ、同気相求む。……雲は竜に従い、風は虎に従う」という「乾」の卦にある一節から。
  • 聡明叡知(そうめいえいち):
    非常に知性に優れ、物事の道理をよく理解していること。
    「古の聡明叡知、神武にして殺さざる者か」(いにしえの、聡明で知恵が深く、武勇にすぐれながら人を殺さなかった聖人)という「繋辞上伝」の一節から。
  • 飛竜天に在り(ひりょうてんにあり):
    竜が所を得て天にいること。聖人が天子の位にあって、万民がその恩恵を受けるたとえ。
    「飛竜天に在り、大人を見るに利し」(竜が天を飛翔する、すぐれた人物に会うのに良い時である)という「乾」の九五の爻辞から。

『易経』に語源の一部がある言葉

次の言葉は、『易経』の一節がそのまま言葉になったものではなく、同書にある一文字・一語が語の半分の由来になっているものです。

  • 温厚篤実(おんこうとくじつ):
    穏やかで誠実な人柄のこと。
    「篤実」は、「大畜は剛健篤実にして輝光あり、日に其の徳を新たにす」という「大畜」の彖伝に見える語。
スポンサーリンク

コメント

URLをコピーしました