「目から鱗が落ちる」経験をしたり、「耳が痛い」話をされたり。
私たちの日常会話には、体の部位を使った表現が驚くほどたくさん溢れています。これは、昔の人々が自分の体を「物差し」にして、感情や人間関係、社会の仕組みを捉えていた証拠と言えるでしょう。
顔・頭部に関する言葉
思考の中枢である「頭」や、感情が表れる「顔」のパーツには、名誉、判断力、コミュニケーションにまつわる言葉が集中しています。
頭・顔
知性や思考、そしてその人の「面目(プライド)」を象徴する部位です。
- 頭が上がらない:相手の実力や恩義に圧倒され、対等に振る舞えないこと。
- 顔から火が出る:恥ずかしくてたまらず、顔が真っ赤になる様子。
- 顔に泥を塗る:面目を潰し、恥をかかせること。
目・見る
「目は口ほどに物を言う」の通り、心の動きや判断力を表す言葉の宝庫です。
- 目から鱗が落ちる:あることがきっかけで、急に物事の本質がわかるようになること。
- 目が点になる:驚きのあまり、呆気にとられる様子。
- 目がない:物事の良し悪しを見分ける力がないこと。または、非常に好んでいること(「甘い物に目がない」など)。
鼻・嗅ぐ
自尊心(プライド)や、直感的な予感を表す際によく使われます。
- 鼻が高い:誇らしく思い、得意になること。
- 鼻につく:飽きて嫌になること。または、人の言動がうっとうしく感じられること。
- 鼻であしらう:相手の言葉をまともに取り合わず、冷淡な態度をとること。
口・舌・話す
災いの元となることもあれば、生活を支える手段ともなるコミュニケーションの要です。
- 口が軽い:おしゃべりで、秘密を守れないこと。
- 口車に乗る:相手の巧みな言葉に騙されること。
- 舌を巻く:相手の能力の高さに驚き、感心すること。
歯・舌・喉
言葉の発信源であると同時に、欲望や攻撃性を表すこともあります。
耳・聴く
情報の入り口であり、世間の評判や予期せぬ知らせに関連する言葉が多くあります。
- 耳を疑う:思いがけない話を聞き、信じられないと思うこと。
- 寝耳に水:不意の出来事に驚くこと。
- 耳が痛い:弱点を指摘され、聞くのがつらいこと。
首
命そのものや、地位(解雇など)、借金などの切羽詰まった状況を表します。
- 首を長くする:期待して待ち焦がれること。
- 首が回らない:借金などが多くて、どうにもやり繰りがつかないこと。
- 首を洗って待つ:処罰や覚悟を決めて待機すること。
上半身・手足に関する言葉
労働や行動力を象徴する手足、責任や感情を受け止める肩や背中などの言葉です。
肩
責任、負担、あるいは味方をすることを表します。
- 肩を持つ:対立している人の片方の味方をすること。
- 肩身が狭い:世間に対して面目が立たず、恥ずかしい思いをすること。
- 肩の荷が下りる:責任や負担がなくなり、ほっとすること。
手・握る
「手」は能力、技術、関係性の象徴として最も多くの慣用句に使われます。
- 手を焼く:扱いかねて困ること。
- 手に汗握る:緊張や興奮でハラハラすること。
- 手が後ろに回る:捕まって罪人となること。
指・爪
細やかな動作や、隠された才能、倹約などを表します。
背中・腰・尻
姿勢や態度は、その人の精神状態や対人関係の力関係を表します。
- 背に腹は代えられない:差し迫った問題を解決するためには、他を犠牲にしても仕方がないこと。
- 腰が低い:人に対する態度が謙虚であること。
- 尻に敷かれる:妻が夫を従わせていること。
足・脚・歩く
生活の基盤、移動、過去との決別などを象徴します。
- 足が出る:予算を超えて赤字になること。または隠し事が露見すること。
- 足を洗う:悪い仕事や仲間との関係を断つこと。
- 揚げ足を取る:人の言い間違いや言葉尻を捉えて責めること。
内臓・骨・皮膚・全身に関する言葉
体の内側や全体を使った表現は、より深い感情や本質、生命力を表します。
心・心臓
感情の中心地であり、度胸の良し悪しも表します。
- 心に刻む:深く記憶して忘れないようにすること。
- 心臓に毛が生えている:図太くて、物事に動じないこと。
- 心を入れ替える:悪い心を改めて、善い心になること。
腹・胸
「腹」は本心や度量、「胸」は感情の高まりや安堵を表します。
- 腹を割る:隠し事をせず、本心を打ち明けること。
- 腹黒い:心の中で悪巧みをしていること。
- 胸を撫で下ろす:心配事が解決してほっとすること。
肝・胆・腸
「肝(きも)」や「胆(きも)」は精神力や勇気の源とされてきました。
- 肝に銘じる:心に深く刻み込んで忘れないこと。
- 肝が据わる:落ち着いていて、めったなことでは驚かないこと。
- 断腸の思い:腸(はらわた)がちぎれるほど、つらく悲しい思い。
骨・血
努力、苦労、または人間としての根本的な感情を表します。
- 骨が折れる:困難で苦労すること。
- 血が騒ぐ:興奮してじっとしていられないこと。
- 血も涙もない:人間らしい思いやりや情けが全くないこと。
へそ・肌・身・毛
体の表面や細部を使った、ユニークで感覚的な表現です。
- へそを曲げる:機嫌を損ねて、意固地になること。
- 身を粉にする:苦労をいとわず、一生懸命に働くこと。
- 身の毛もよだつ:恐ろしさのあまり、全身の毛が逆立つように感じること。
その他(体・身体)
体全体の状態や、健康にまつわる言葉です。
- 体がいい:うわべの体裁が整っていること。「体(てい)のいい断り文句」のように使います。
- 五体満足:手足や体の各部が揃っていて、健康なこと。






















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