サンバのリズム、サッカーへの情熱、そしてアマゾンの大自然。
ブラジルのことわざ(Ditados Populares)には、この国の人々が持つ「楽天的な明るさ」と、困難な現実を生き抜くための「したたかな知恵」が溢れています。
「神はブラジル人だ(だから何とかなる)」という究極のポジティブ思考から、「空の袋は立たない(腹が減っては戦ができぬ)」といった現実的な教訓まで。
今回は、ポルトガル語学習者はもちろん、ラテン文化に興味がある方に向けて、日常会話でも使える有名なブラジルのことわざ30選を、意味・由来・カタカナ読み付きで解説します。
【人生・運命】「ジェイチーニョ(何とかする)」の精神
どんな困難も、持ち前の明るさと機転(ジェイチーニョ)で乗り切ろうとするブラジル流の人生哲学です。
神はブラジル人だ
Deus é brasileiro.
(デウス・エ・ブラジレイロ)
ブラジルは神様に特別に愛されている国だから、どんなにひどい状況になっても最後には奇跡的にうまくいく(なんとかなる)。
ブラジル人の底抜けの楽観性と、自己肯定感の高さを象徴する、最も有名なフレーズの一つです。
最後に笑う者が、最もよく笑う
Quem ri por último, ri melhor.
(ケン・ヒ・ポル・ウルチモ・ヒ・メリョール)
「最後に笑う者が勝つ」
途中でどんなに負けていても、最後に勝てばそれが最高の結果だ。
逆転劇を信じる強さと、途中経過で一喜一憂しない粘り強さを説く言葉です。
幸運は大胆な者に味方する
A sorte ajuda os audazes.
(ア・ソルチ・アジュダ・オス・アウダゼス)
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」
リスクを恐れずに挑戦する勇気ある人こそが、幸運の女神に愛される。
情熱的で挑戦的なブラジル人の気質にぴったりの言葉です。
こぼれたミルクを嘆いても無駄
Não adianta chorar sobre o leite derramado.
(ナォン・アジアンタ・ショラール・ソブリ・オ・レイチ・デハマード)
「覆水盆に返らず」
起きてしまった失敗をいつまでも嘆いていても時間は戻らない。
「過ぎたことは忘れて、次へ行こう(ボラ・プラ・フレンチ!)」という切り替えの早さが重要です。
待つ者は常にたどり着く(達成する)
Quem espera sempre alcança.
(ケン・エスペラ・センプリ・アルカンサ)
「待てば海路の日和あり」
諦めずに辛抱強く待ち続ければ、いつか必ず願いは叶う。
「Deus é brasileiro(神はブラジル人)」の精神と共に、希望を持ち続けることの大切さを説いています。
急ぎは完璧の敵
A pressa é inimiga da perfeição.
(ア・プレッサ・エ・イニミーガ・ダ・ペルフェイサォン)
「急いては事を仕損じる」
焦ってやると仕事が雑になり、完璧な結果は得られない。
のんびり屋が多いと言われるブラジルですが、クオリティのためには時間をかけるべきだという教えもしっかり存在します。
犬がなければ猫で狩る
Quem não tem cão, caça com gato.
(ケン・ナォン・テン・カォン・カサ・コン・ガト)
猟犬がいなければ、猫を使ってでも狩りをする。
理想的な道具や条件が揃っていなくても、手元にあるもので工夫して何とかする。
これこそがブラジル人の得意技「ジェイチーニョ(機転・工夫)」の真髄です。
用心深い者は老衰で死んだ
O seguro morreu de velho.
(オ・セグーロ・モヘウ・ジ・ヴェリョ)
用心深い人は長生きして老衰で死ぬ(だから用心に越したことはない)、という意味と、用心深すぎて何も刺激的なことが起きずに死んでいく(皮肉)、という二通りの解釈ができます。
一般的には「用心(安全策)をとっておけば間違いない」という意味で使われます。
【人間関係・社会】付き合い方の知恵
陽気な人間関係の中にも、鋭い観察眼と社会的な処世術が光ります。
誰と歩くか言えば、あなたが誰だか言おう
Diga-me com quem andas e dir-te-ei quem és.
(ジガ・ミ・コン・ケン・アンダス・イ・ジール・チ・エイ・ケン・エス)
「類は友を呼ぶ」
付き合っている友達を見れば、その人がどんな人間かは一目瞭然だ。
人間関係を重視する社会だからこそ、付き合う相手は慎重に選べという教えです。
一人が望まねば、二人は喧嘩しない
Quando um não quer, dois não brigam.
(クアンド・ウン・ナォン・ケール・ドイス・ナォン・ブリガム)
喧嘩は一人ではできない。相手が挑発してきても、自分が乗らなければ争いにはならない。
争いを避けるための知恵であり、喧嘩両成敗の考え方に通じます。
沈黙する者は同意する
Quem cala consente.
(ケン・カラ・コンセンチ)
何も言わないということは、反対していない(同意している)とみなされる。
自己主張がはっきりしている文化圏ならではの、「嫌ならはっきり言え」というルールです。
他人の目の唐辛子は清涼剤
Pimenta nos olhos dos outros é refresco.
(ピメンタ・ノス・オリョス・ドス・アウトロス・エ・ヘフレスコ)
「対岸の火事」、「他人の不幸は蜜の味」
他人が目の中に唐辛子が入って苦しんでいても、自分にとっては清涼剤(目薬)のように涼しいことだ(痛くも痒くもない)。
他人の痛みに対する無関心や、シャーデンフロイデ(他人の不幸を喜ぶ気持ち)を強烈に皮肉った言葉です。
盲人の国では、片目の者が王様
Em terra de cego, quem tem um olho é rei.
(エン・テーハ・ジ・セゴ・ケン・テン・ウン・オリョ・エ・ヘイ)
「鳥なき里の蝙蝠(こうもり)」
周りのレベルが低ければ、少し能力があるだけで王様のように振る舞える。
井の中の蛙を戒める言葉としても使われます。
命令できる者が命令し、分別ある者が従う
Manda quem pode, obedece quem tem juízo.
(マンダ・ケン・ポジ・オベデセ・ケン・テン・ジュイーゾ)
「長いものには巻かれろ」
権力には逆らわず、賢く従っておくのが身のためだという、少しシニカルで現実的な処世術です。
【家族・生活】日々の暮らしの教え
家族の絆や、日々の生活から生まれた素朴な知恵です。
魚の子は、魚(小魚)
Filho de peixe, peixinho é.
(フィーリョ・ジ・ペイシェ・ペイシーニョ・エ)
「蛙の子は蛙」
子供は親に似るものだ。
才能を受け継いでいることを褒める時にも、欠点が似ていることを呆れる時にも使われます。
鍛冶屋の家では、串は木製
Casa de ferreiro, espeto de pau.
(カーザ・ジ・フェヘイロ・エスペト・ジ・パウ)
「紺屋の白袴」、「医者の不養生」
鉄を扱う鍛冶屋なのに、自分の家で使う串は木製だ(商売道具を使わない)。
専門家が自分のことには無頓着であることのたとえです。シュラスコ(串焼き肉)が好きなブラジルらしい表現です。
空の袋は立たない
Saco vazio não para em pé.
(サコ・ヴァジオ・ナォン・パラ・エン・ペ)
「腹が減っては戦ができぬ」
中身(食べ物)が入っていない袋(体)は、ふにゃふにゃして立っていられない。
「まずは腹ごしらえだ!」と食事に誘う時の決まり文句です。
穀物一粒ずつ、鶏は腹を満たす
De grão em grão, a galinha enche o papo.
(ジ・グラォン・エン・グラォン・ア・ガリーニャ・エンシェ・オ・パポ)
「塵も積もれば山となる」
小さな穀物でも、一粒ずつ食べ続ければ鶏のお腹はいっぱいになる。
コツコツと努力や貯金をすることの大切さを説く言葉です。
醜いものを愛する者には、それが美しく見える
Quem ama o feio, bonito lhe parece.
(ケン・アマ・オ・フェイオ・ボニート・リェ・パレセ)
「痘痕もえくぼ」、「恋は盲目」
愛があれば、客観的には欠点だらけのものでも美しく見える。
愛の力の偉大さ(と、盲目さ)を表しています。
各サルは自分の枝に
Cada macaco no seu galho.
(カダ・マカコ・ノ・セウ・ガリョ)
「餅は餅屋」
サルはそれぞれの自分の枝にいるべきで、他人の枝(領域)に口出ししてはいけない。
「余計なお世話だ」「自分のことだけ気にしていろ」と言いたい時に使われます。
良い理解者には、半分の言葉で十分
Para bom entendedor, meia palavra basta.
(パラ・ボン・エンテンデドール・メイア・パラヴラ・バスタ)
「一を聞いて十を知る」
察しの良い人には、全てを言わなくても少しヒントを出すだけで通じる。
粋なコミュニケーションや、暗黙の了解を指します。





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