「春眠暁を覚えず」「花より団子」のように、春の眠りや花見を題材にしたことわざがある一方、「春秋に富む」「我が世の春」のように、「春」が年月や人生の盛りを指す言葉もあります。
春のことわざ・慣用句と春の四字熟語58語を、天気と気候、冬の終わりと春の兆し、桜と春の花、のどかな景色、教えやたとえなどに分けて、読み・意味とともに紹介します。
もくじ
春の天気と気候
- 暑さ寒さも彼岸まで(あつささむさもひがんまで):
冬の寒さは春の彼岸のころに和らぎ、夏の残暑も秋の彼岸のころには衰えるということ。
春と秋の両方の彼岸についていう言葉で、春だけの言葉ではない。 - 春に三日の晴れなし(はるにみっかのはれなし):
春の天気は変わりやすく、晴れた日が長く続かないこと。 - 八十八夜の忘れ霜(はちじゅうはちやのわすれじも):
立春から数えて八十八日目の、五月二日ごろに降りる霜。
その春の最後の霜で、これより後は霜が降りないとされる。 - 春の雪と叔母の杖は怖くない(はるのゆきとおばのつえはこわくない):
見かけは恐ろしそうでも、実際には大したことがなく、恐れる必要がないもののたとえ。 - 東風吹けば雨(こちふけばあめ):
東から風が吹いてくると、まもなく雨が降るという言い伝え。 - 春寒料峭(しゅんかんりょうしょう):
春先の冷たい風が、肌に寒く感じられるさま。
「料峭」の「料」はなでる・触れる、「峭」は厳しいという意味。
冬の終わりと春の兆し
- 冬来たりなば春遠からじ(ふゆきたりなばはるとおからじ):
つらい時期を耐え抜けば、幸せな時期は必ず来るというたとえ。
長い冬を耐えて春を待つ気持ちを言い表すのにも使う。
イギリスの詩人シェリーの詩「西風の賦」の一節から。 - 三寒四温(さんかんしおん):
晩秋から初春にかけて、寒い日が三日ほど続いたあとに暖かい日が四日ほど続き、これを繰り返す気候。
本来は冬の気候をいう言葉で、俳句では冬の季語。 - 一陽来復(いちようらいふく):
冬至、または陰暦十一月のことで、冬の季語。
易で、陰がきわまったあと、冬至に陽が初めて生じるとすることからいう。
そこから、冬が去って春が来ること、悪いことが続いたあとにようやくよい方へ向かうことの意味でも使う。 - 梅に鶯(うめにうぐいす):
取り合わせがよく、互いに引き立て合う二つのもののたとえ。
仲のよい間柄のたとえにも使う。 - 雪解け(ゆきどけ):
春になって、降り積もった雪がとけること、また、そのころ。
ソ連の作家エレンブルグの小説名から、対立していた国どうしの緊張がゆるみ、和解に向かうことも指すようになった。 - 梅は百花の魁(うめはひゃっかのさきがけ):
梅はほかのどの花よりも早く咲き、春の訪れを知らせるということ。
物事の先駆けとなる人のたとえにも使う。 - 立春大吉(りっしゅんだいきち):
立春の日に、禅寺やその檀家の門に貼る紙札の文句、また、その紙札。
一年の厄除けと幸運を願う言葉で、春の季語。 - 山笑う(やまわらう):
春になって山の草木が一斉に芽吹き、山全体が明るくなる様子をいう春の季語。
中国の「臥遊録」にある「春山淡冶として笑うが如し」から。 - 風光る(かぜひかる):
春の日の光がうららかに照る中を、そよ風が吹き渡ること。
春の季語。 - 東風解凍(とうふうかいとう):
春の暖かい東風が吹き、冬の間に張った氷がとけ始めるという意味の言葉。 - 草木萌動(そうもくほうどう):
草木が芽吹き始め、新しい命が動き出すこと。 - 枯木逢春(こぼくほうしゅん):
枯れた木が再び春にめぐりあって芽吹くように、恵まれない状態にあった者が、再び勢いを取り戻すことのたとえ。
桜と春の花
- 花より団子(はなよりだんご):
花を眺めて楽しむよりも、団子を食べるほうがよいということ。
風流よりも実利を、見た目よりも実質を重んじることのたとえで、風流を解さないことのたとえにもいう。
この「花」は、花見の桜を指す。 - 世の中は三日見ぬ間の桜かな(よのなかはみっかみぬまのさくらかな):
世の中は、三日見ないうちに散ってしまう桜の花のようなもので、移り変わりが激しいというたとえ。
俳人、大島蓼太の句から出た言葉で、「世の中は三日見ぬ間に桜かな」ともいう。 - 明日ありと思う心の仇桜(あすありとおもうこころのあだざくら):
「明日でも間に合う」と、物事を先に延ばそうとする心を戒める言葉。
「仇桜」は散りやすい桜の花で、はかないもののたとえ。 - 花は桜木人は武士(はなはさくらぎひとはぶし):
花では桜が第一であるように、人では潔い武士が第一であるということ。 - 桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿(さくらきるばかうめきらぬばか):
桜は枝を切ると弱り、梅は余分な枝を切らないとよい花や実がつかない。
木の手入れは、それぞれの性質に合わせて行うべきだという教え。 - 百花繚乱(ひゃっかりょうらん):
さまざまな花が咲き乱れること。
転じて、すぐれた業績や人物が一時期に数多く現れることのたとえ。 - 桜花爛漫(おうからんまん):
桜の花が一面に咲き乱れ、みごとに咲き誇っている様子。 - 酒なくて何の己が桜かな(さけなくてなんのおのれがさくらかな):
酒がなければ、どんなに美しい桜を前にしても、その趣は半減してしまうということ。 - 一目千本(ひとめせんぼん):
一目で千本もの桜が見渡せる所。
特に、奈良県の吉野山の桜を見るのによい場所をいう。 - 桜咲く(さくらさく):
入学試験などに合格すること。
もとは、合格の知らせを短い文字数で伝えるための電報の決まり文句。 - 桜梅桃李(おうばいとうり):
桜・梅・桃・李がそれぞれの美しさで咲くように、一人ひとりが自分の個性を磨き、自分らしく輝くこと。 - 桃始笑(ももはじめてわらう):
七十二候の一つで、桃の花が咲き始める時期。 - 桜始開(さくらはじめてひらく):
七十二候の一つで、桜の花が咲き始めるころを指す。
のどかな春の景色と春の眠り
- 春眠暁を覚えず(しゅんみんあかつきをおぼえず):
春の夜は眠り心地がよいので、夜が明けたことにも気づかず、なかなか目が覚めない。
唐の詩人、孟浩然の詩「春暁」の一句から。 - 春宵一刻値千金(しゅんしょういっこくあたいせんきん):
花は香り、月はおぼろにかすむ春の夜のひとときは、趣が深く、千金にも換えがたいということ。
北宋の蘇軾の詩「春夜」の一節から。 - 春は蛙が目を借りる(はるはかえるがめをかりる):
春に眠くなるのは、蛙が人の目を借りていくからだという言い伝え。 - 春風駘蕩(しゅんぷうたいとう):
春風がのどかに吹くさま。
また、人の態度や性格、その場の雰囲気などが、のんびりとして穏やかなさま。 - 春日遅々(しゅんじつちち):
春の日が長く、のどかにゆったりと過ぎていくこと。 - 柳暗花明(りゅうあんかめい):
柳の葉が茂ってほの暗く、花が咲いて明るいことで、春の野の美しい景色をいう。
花柳界や色町を指すこともある。
南宋の陸游の詩「山西村に遊ぶ」の句から。 - 柳緑花紅(りゅうりょくかこう):
柳は緑、花は紅であるように、物事が自然のままで、人の手が加わっていないことのたとえ。
春の美しい景色をたたえるのにも使う。 - 春和景明(しゅんわけいめい):
春の気候が穏やかで、日の光が明るく、景色が清らかに澄みわたっている様子。 - 鳥語花香(ちょうごかこう):
鳥の鳴き声と花の香りの意味で、のどかな春の風景のこと。
呂本中の詩から。 - 桃紅柳緑(とうこうりゅうりょく):
桃の花の紅色と、柳の新芽の緑色。
春の美しい景色をいい、王維の詩に見える言葉。
「柳緑桃紅」ともいう。 - 春花秋月(しゅんかしゅうげつ):
春の花と秋の月。
四季折々の自然の美しさのたとえ。
春の景物を借りた教え・たとえ
- 落花流水(らっかりゅうすい):
散る花と流れる水のことで、春の終わりの景色をいう。
花が水に散れば水もこれを受け入れて浮かべて流れるように、男女が互いに思い合う情のたとえにも使う。 - 春植えざれば秋実らず(はるうえざればあきみのらず):
春に種を植えなければ秋に実りがないように、何事も努力しなければ、よい結果は生まれないということ。 - 春蘭秋菊ともに廃すべからず(しゅんらんしゅうぎくともにはいすべからず):
春の蘭も秋の菊も、それぞれに趣があって美しく、優劣をつけにくい。
そこから、双方ともにすぐれていて甲乙つけがたいことのたとえ。
中国の「旧唐書」に見える言葉で、四字熟語で「春蘭秋菊」ともいう。 - 春風満面(しゅんぷうまんめん):
心地よい春風を受けたように、喜びが顔いっぱいにあふれている様子。 - 秋財布に春袋(あきざいふにはるぶくろ):
秋には財布を縫うな、春には袋を縫えということ。
「秋」は「空き」に通じて縁起が悪く、「春」は「張る」に通じて縁起がよいことから。 - 春風接人(しゅんぷうせつじん):
春の風のように、穏やかで温かい態度で人に接すること。 - 春蛙秋蝉(しゅんあしゅうぜん):
うるさいだけで、何の役にも立たない無用の言論。
春の蛙と秋の蝉が、どちらもやかましく鳴くことからいい、中国の「物理論」に見える言葉。 - 蟪蛄春秋を知らず(けいこしゅんじゅうをしらず):
命の短いことのたとえ。
「蟪蛄」はツクツクボウシのことで、夏の間だけ生きて、春も秋も知らないことから。
「春」が別の意味・たとえになる言葉
- 我が世の春(わがよのはる):
何事も自分の思いどおりになる、最も得意な時期。
ここでの「春」は、季節ではなく、その人の最も盛んな時期を指す。 - 春秋に富む(しゅんじゅうにとむ):
年が若く、この先の年月が長いこと。
「春秋」は一年、また年月を表し、ここでは年齢を指す。 - 春秋高し(しゅんじゅうたかし):
年をとって、年齢が高い。
ここでの「春秋」は年月、つまり年齢を指し、春秋に富むと反対の意味になる。
中国の「戦国策」から出た言葉。 - 春秋の筆法(しゅんじゅうのひっぽう):
事実を述べるときに、書き手の価値判断を加えて書く書き方。
特に、間接的な原因を結果に直接結びつけて、厳しく批判する書き方をいう。
ここでの「春秋」は孔子がまとめた歴史書の名で、その文章に正邪の判断が込められているとされることから。 - 春の夜の夢(はるのよのゆめ):
春の夜に見る夢のように、はかなく短いことのたとえ。
「平家物語」の「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」でも知られる。 - 一場の春夢(いちじょうのしゅんむ):
その場限りで消える短い春の夢のように、人の世の栄華がきわめてはかないことのたとえ。
中国の「侯鯖録」から。 - 池塘春草の夢(ちとうしゅんそうのゆめ):
池の堤の春草の上で見た夢のように、少年時代・青春時代の楽しさと、そのはかなさをたとえた言葉。
南宋の朱熹の作とされる詩「偶成」の一節から。 - 寸草春暉(すんそうしゅんき):
親の大きな恩に報いようとする、子のささやかな努力のこと。
春の日の光を親の恵みに、それを受けて伸びようとする小さな草を子にたとえたもので、孟郊の詩から。
春の言葉に見る「のどかさ」と「はかなさ」、春と秋の取り合わせ
春にまつわる言葉には、のどかな景色や眠りの心地よさを言い表すものがあります。
その一方で、すぐに散る花や短い夜の夢を借りて、はかなさや戒めを言い表す言葉も少なくありません。
また、春を秋と一組にして、年月や物事の優劣を言い表す言葉もあります。
のどかな春と、散る花・短い夢
春の風は、のどかに吹くさまだけでなく、人の温和な態度や、喜びがあふれた表情のたとえにも使われます。
眠り心地のよい春の夜明けも、詩の一句や言い伝えとして言葉に残っています。
反対に、桜はすぐに散ってしまうことから、世の中の移り変わりの速さや、物事を先に延ばす心を戒める言葉に使われます。
春の夜に見る夢も、栄華や若い時代がたちまち過ぎ去ることを表す言葉になっています。
| 分類 | 代表例 |
|---|---|
| 穏やかさ | 春風駘蕩/春風満面/春風接人 |
| 眠り | 春眠暁を覚えず/「春は蛙が目を借りる」 |
| 散る桜 | 世の中は三日見ぬ間の桜かな/明日ありと思う心の仇桜 |
| 短い夢 | 「春の夜の夢」/一場の春夢/「池塘春草の夢」 |
春と秋を一組にした言葉
春は花、秋は月や実りの季節として、二つを並べて言い表す言葉があります。
季節の巡りをそのまま年月に見立てたものや、二つの季節のよさを比べるもの、春の働きと秋の結果を結びつけるものなど、並べ方によって意味が変わります。
- 年月と年齢:
「春秋」で年月を表し、春秋に富む・「春秋高し」のように、若さや年齢の高さを言い表す例。 - 甲乙つけがたい美しさ:
「春蘭秋菊ともに廃すべからず」・「春花秋月」のように、春と秋それぞれの美しさを並べる例。 - 植えることと実ること:
「春植えざれば秋実らず」のように、春にしておくことが秋の結果につながると説く例。 - 語呂や鳴き声の取り合わせ:
縁起を語呂で言い分ける「秋財布に春袋」や、やかましい鳴き声を無用の言論にたとえる「春蛙秋蝉」のような例。




コメント