「経世済民」「先憂後楽」のようによい政治と為政者の心得を表す言葉から、「苛政は虎よりも猛し」「朝令暮改」のように悪い政治を戒める言葉、「鼎の軽重を問う」「合従連衡」のような権力争いの言葉まで、政治と権力をめぐることわざ・四字熟語・故事成語を集めました。
権力者とそれに従う人を表す言葉、「大政奉還」「文明開化」など日本の歴史に出てくる言葉、政治の形を表す言葉もあわせて、読み・意味とともに紹介します。
もくじ
よい政治と為政者の心得を表す言葉
- 経世済民(けいせいさいみん):
世の中を治め、人民を苦しみから救うこと。
政治のことを重々しく言い表した言葉で、「経国済民」ともいう。 - 先憂後楽(せんゆうこうらく):
国の安危については人より先に心配し、楽しむのは人より後にするという心構え。
北宋の范仲淹の「岳陽楼記」の一節から出た言葉で、志士や仁者が国を思う心のあり方を述べたもの。
今では、人の上に立つ者の心がけとしても使われる。 - 一視同仁(いっしどうじん):
だれかれの区別なく、すべての人を平等に見て、等しく愛すること。
唐の韓愈が、聖人のあり方を説いた文章「原人」の言葉から。 - 綸言汗の如し(りんげんあせのごとし):
君主が一度口にした言葉は、出た汗が体に戻らないのと同じで、取り消すことができないということ。
「綸言」は天子の言葉のこと。
「漢書」にある「号令は汗の如し」を踏まえた言い方。 - 治に居て乱を忘れず(ちにいてらんをわすれず):
太平の世にあっても戦乱のときのことを忘れず、備えを怠らないという心がけ。
「易経」の言葉から。 - 民信無くば立たず(たみしんなくばたたず):
政治は、民衆の信頼がなければ成り立たないということ。
孔子が、政治で大切なものとして軍備・食糧・民衆の信頼の三つを挙げ、中でも信頼がいちばん重いと説いた「論語」の言葉から。
「民信無くんば立たず」ともいう。 - 綱紀粛正(こうきしゅくせい):
国家の規律を整え、政治の不正を戒めて正すこと。
また、一般に規律を正すことにもいう。
「綱紀」は、国を治めるうえでの規律のこと。 - 王道楽土(おうどうらくど):
王道によって治められる、平和で楽しい土地。
「王道」は、儒教で理想とされた、徳によって国を治める政治をいう。 - 国利民福(こくりみんぷく):
国家の利益と、国民の幸福。
悪い政治と暴君を表す言葉
- 朝令暮改(ちょうれいぼかい):
朝に出した命令を夕方にはもう改めるように、命令や方針がたびたび変わって定まらないこと。
前漢の晁錯が文帝に差し出した文章にある言葉。 - 酒池肉林(しゅちにくりん):
酒や料理がふんだんにある、ぜいたくを極めた酒宴。
殷の暴君として知られる紂王が、酒で池を満たし、肉を木に掛けて林に見立て、夜通し宴を続けたという「史記」の話から。 - 鹿を指して馬と為す(しかをさしてうまとなす):
人を威圧して、間違いを押し通すことのたとえ。
また、人をだまして陥れることにもいう。
秦の趙高が自分の権勢を試そうと、鹿を馬だと偽って皇帝に献上したという「史記」の故事から。 - 苛斂誅求(かれんちゅうきゅう):
税金などを、情け容赦なく厳しく取り立てること。
「苛斂」も「誅求」も、むごい取り立てを表す。 - 貪官汚吏(たんかんおり):
欲が深く賄賂などをむさぼる役人と、不正をはたらく役人。
私利のために不正をする、腐敗した役人たちをまとめていう言葉。 - 乱臣賊子(らんしんぞくし):
国を乱す臣下と、親を害する子。
「孟子」にある言葉。 - 苛政は虎よりも猛し(かせいはとらよりもたけし):
むごい政治が人々に与える害は、虎の害よりもひどいということ。
虎に家族を殺されても、ここには苛酷な政治がないからと言って土地を離れない女性がいた。
その女性に出会った孔子が、弟子に語ったという「礼記」の話から。 - 官尊民卑(かんそんみんぴ):
政府や役人を尊いものとし、民間の人や事業を低く見る考え方。 - 城狐社鼠(じょうこしゃそ):
君主のそばに仕えている、よこしまな家来。
城にすむキツネや社にすむネズミは、城や社を壊さなければ追い払えないことから、除きにくい悪臣のたとえにいう。
権力を握る・失うことを表す言葉
- 鶴の一声(つるのひとこえ):
多くの人の議論や意見を抑えつける、有力者や権威者の一言。
「雀の千声鶴の一声」と対比して使われるうちに、騒がしい場をたちまち静める一言の意味になった。 - 飛ぶ鳥を落とす勢い(とぶとりをおとすいきおい):
権力や威勢が非常に盛んな様子。 - 三日天下(みっかてんか):
ごく短い間しか権力や地位を保てないこと。
明智光秀が織田信長を倒して天下を取ってから、わずか13日後に豊臣秀吉に滅ぼされたことから。
「みっかでんか」とも読む。 - 驕る平家は久しからず(おごるへいけはひさしからず):
地位や財力を鼻にかけ、おごり高ぶる者は、長くその身を保てないというたとえ。
「平家物語」の「驕れる人も久しからず」から出た言葉。 - 生殺与奪(せいさつよだつ):
生かすも殺すも、与えるも奪うも思いのままであるさま。
人民や部下などを意のままに支配する意味で、多く「生殺与奪の権を握る」の形で使われる。 - 牛耳を執る(ぎゅうじをとる):
同盟の盟主になること。
また、団体の中心となって、思いどおりに事を運ぶことにもいう。
古代中国で血盟を結ぶとき、牛の耳を取る者が盟主とされたことから。 - 鼎の軽重を問う(かなえのけいちょうをとう):
統治者を軽んじ、これを滅ぼして天下を取ろうとすること。
転じて、人の実力を疑い、その地位から落とそうとすることにもいう。
春秋時代、楚の荘王が、周の王室に伝わる、王位の象徴である九鼎の大きさと重さを尋ねたという「春秋左氏伝」の故事から。
「軽重」を「けいじゅう」と読むのは誤り。 - 一将功成りて万骨枯る(いっしょうこうなりてばんこつかる):
一人の将軍が輝かしい手柄を立てる陰には、戦場で命を落とした多くの兵士の犠牲があるということ。
功名が指導者だけのものとされるのを嘆く言葉で、唐の曹松の詩の一句から。 - 易姓革命(えきせいかくめい):
天子の徳が衰えると天命が改まり、徳のある別の姓の者が新しい王朝を開くという、中国古代の政治思想。
王朝が変わって天子の姓が変わる「易姓」と、天命が改まる「革命」を合わせた言葉。 - 禅譲放伐(ぜんじょうほうばつ):
中国で王朝が交代するときの二つの形。
「禅譲」は天子が徳のある者に平和的に位を譲ることで、「放伐」は徳を失った君主を武力で追放したり討ったりして位を奪うことをいう。
堯から舜への交代は禅譲、殷の湯王が夏の桀王を追放したのは放伐の例とされる。
権力争いと駆け引きを表す言葉
- 権謀術数(けんぼうじゅっすう):
人をたくみにあざむくためのはかりごと。
また、さまざまな計略をめぐらすこと。
「権」「謀」「術」「数」は、どれも計略を意味する字。 - 合従連衡(がっしょうれんこう):
その時々の状況に応じて、いくつかの勢力が結び合う動き。
また、そのための駆け引き。
中国の戦国時代、蘇秦が強国の秦に対抗するため六つの国を南北に同盟させた「合従」と、張儀が六国をそれぞれ秦と東西に結ばせた「連衡」から。 - 朝三暮四(ちょうさんぼし):
目先の違いに気を取られ、実際は同じであることに気づかないこと。
また、うまい言葉や方法で人をだますこと。
宋の狙公が、飼っている猿にトチの実を朝に三つ、夕方に四つやると言うと猿たちは怒り、朝に四つ、夕方に三つと言うと喜んだという故事から。
「列子」では、この話に続けて、聖人が知恵で民衆を丸め込むさまを、狙公が猿を手なずけるのにたとえている。 - 飴と鞭(あめとむち):
甘い扱いで譲歩する一方で、厳しく締めつける支配や指導のやり方。
労働者を社会保険制度で優遇しながら、社会主義者鎮圧法で抑え込んだ、ドイツの宰相ビスマルクの政策を評した言葉。 - 以夷制夷(いいせいい):
他国の力を利用して、別の他国の力を抑えること。
「夷を以て夷を制す」ともいう。
「夷」は、昔の中国で周辺の民族をさげすんで呼んだ言葉。
人材を招き、用いることを表す言葉
- 三顧の礼(さんこのれい):
地位のある人が、礼を尽くして人を招いたり、仕事を頼んだりすること。
また、ある人を特別に信任し、優遇すること。
後漢の末、劉備が諸葛亮の住まいを何度も訪ね、ついに補佐役に迎えたことから。 - 先ず隗より始めよ(まずかいよりはじめよ):
大きな事業をするには、まず手近なことから始めよということ。
また、物事は言い出した者から始めよということ。
戦国時代、燕の昭王に賢者の招き方を尋ねられた郭隗が、まず凡庸な自分を重く用いれば、自分よりすぐれた人物が自然に集まってくると答えたという「戦国策」の故事から。 - 泣いて馬謖を斬る(ないてばしょくをきる):
規律を保つためには、たとえ目をかけている者でも、違反した者は厳しく処分するというたとえ。
三国時代、蜀の諸葛亮(孔明)が、命令に背いて魏に大敗した部下の馬謖を、泣いて斬罪に処したという「三国志」の故事による。
権力者と、それに従う人を表す言葉
- 長いものには巻かれろ(ながいものにはまかれろ):
自分より力の強い者や上の立場の者には、ひとまず従っておくのが無難で得策だという処世の教え。 - 寄らば大樹の陰(よらばたいじゅのかげ):
同じ頼るなら、勢力のある人のほうがよいというたとえ。
身を寄せるなら、大きな木の下が安全だという意味から。 - 泣く子と地頭には勝てぬ(なくことじとうにはかてぬ):
聞き分けのない子どもや横暴な地頭とは、道理で争っても勝ち目がないということ。
道理の通じない相手には、黙って従うしかないという意味。
江戸時代の「地頭」は、領地の徴税や裁きに強い権限を持った領主のこと。 - 逆鱗に触れる(げきりんにふれる):
天子の怒りを買うこと。
また、目上の人を激しく怒らせること。
竜ののどの下に逆さに生えたうろこに触れると、必ず殺されるという「韓非子」のたとえ話から。
自分や目下の人について使うのは誤り。 - 上意下達(じょういかたつ):
上に立つ者や上層部の考え・命令を、下の者に伝えること。
反対に、下の者の意見を上に届けることは「下意上達」という。
この語の「下」は「げ」とは読まない。 - 滅私奉公(めっしほうこう):
私心を捨てて、公のために尽くすという心構え。
第二次世界大戦中、日本国民が心がけるべきこととして標語に掲げられた。 - 裸の王様(はだかのおうさま):
地位が高く、周りからちやほやされて批判や反対を受けないために、本当の自分が分からなくなっている人のたとえ。
アンデルセンの童話の主人公から。 - 民は之に由らしむべし之を知らしむべからず(たみはこれによらしむべしこれをしらしむべからず):
人民は導いて従わせることはできるが、その道理を説いて分からせるのは難しいということ。
また、人民は命令で従わせればよく、方針を説明する必要はないという意味でも使われる。
「論語」にある孔子の言葉。
世の中が治まる・乱れることを表す言葉
- 天下泰平(てんかたいへい):
世の中がよく治まって平和なこと。
また、何事もないようにのんびりしている様子。
「泰平」は「太平」とも書く。 - 挙国一致(きょこくいっち):
一つの目的のために、国民全体が一体となって同じ態度をとる状態。 - 金甌無欠(きんおうむけつ):
傷のない黄金のかめのように、物事が完全で欠点のないこと。
特に、国家が強固で、一度も外国の侵略を受けたことがないことのたとえにいう。
「南史」にある言葉から。 - 国破れて山河在り(くにやぶれてさんがあり):
戦乱で国は滅び、元の姿はなくなっても、山や川だけは昔のままに残っているということ。
唐の杜甫の詩「春望」の冒頭の句。
日本の歴史に出てくる言葉
- 下剋上(げこくじょう):
下の者が上の者に打ち勝って、権力を手にすること。
南北朝時代から戦国時代にかけて、農民が領主に背いて一揆を起こし、家臣が主家を滅ぼして大名になっていった乱世の風潮をいう。
今では、下位の者が上位の者に勝つことにも使われる。
「下克上」とも書く。 - 勝てば官軍、負ければ賊軍(かてばかんぐんまければぞくぐん):
戦いに勝ったほうが正義とされ、負けたほうが不義とされるということ。
道理はどうあれ、強い者が正しいことになるというたとえ。
戊辰戦争の際の、薩長軍と幕府軍の戦いから生まれた言葉。 - 尊皇攘夷(そんのうじょうい):
江戸時代の末、天皇を尊ぶ尊王論と、外国を打ち払う攘夷論が結び付いた政治思想。
水戸学などに現れて下級武士を中心に全国へ広まり、王政復古と倒幕の思想につながった。
もとは中国で、周の王室を尊び、異民族の侵入を打ち払うことをいった言葉。
「尊王攘夷」とも書く。 - 大政奉還(たいせいほうかん):
政権を天皇に返すこと。
慶応3年(1867)10月14日、江戸幕府の15代将軍徳川慶喜が政権の返上を朝廷に申し入れ、翌日に受け入れられたことをいう。
これによって、鎌倉幕府から約700年続いた武家政治が終わった。 - 王政復古(おうせいふっこ):
武家政治や共和制などが廃されて、再びもとの君主による政治に戻ること。
日本では、慶応3年12月9日(1868年1月3日)に倒幕派が出した王政復古の大号令によって、政権が朝廷に戻ったことを指す。 - 富国強兵(ふこくきょうへい):
国を豊かにし、軍事力を大きくして、国の勢力を強めようとする考え方や政策。
明治政府が、欧米の国々に追い付くための国の目標として掲げた。 - 殖産興業(しょくさんこうぎょう):
生産を増やし、産業を盛んにすること。
明治の初めに政府が富国強兵と並ぶ柱として進めた政策を指す。
官営の工場を開いたり、民間の企業を助けたりして産業を育てた。 - 文明開化(ぶんめいかいか):
世の中が開けて、生活が便利になっていく様子。
特に明治の初め、日本が西洋の文明を積極的に取り入れ、急速に西洋化・近代化した動きをいう。
中国の古い書物に出てくる「文明」と「開化」を結び付けた語で、福沢諭吉が「西洋事情」で初めて使ったといわれる。 - 和魂洋才(わこんようさい):
日本人固有の精神を持ちながら、西洋伝来の学問や知識を選び取って生かすという行き方。
「和魂漢才」にならって、明治になってできた言葉。 - 天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず(てんはひとのうえにひとをつくらず、ひとのしたにひとをつくらず):
人間は生まれながらに平等であり、身分の上下や貴賤の差別は初めからあるものではないということ。
福沢諭吉の「学問のすゝめ」の冒頭の言葉。
政治の形を表す言葉
- 専制君主(せんせいくんしゅ):
国家のすべての権力を一手に握り、国の機関を自分の意思どおりに動かす君主。 - 専制政治(せんせいせいじ):
個人が絶対的な権力を持ち、思うままに支配する政治の形。
アリストテレスは、君主制が堕落した形とした。 - 寡頭政治(かとうせいじ):
少数の者が国家の最高機関を組織して行う、独裁的な政治。 - 衆愚政治(しゅうぐせいじ):
自覚のない無知な民衆によって行われる政治。
もとはペリクレスが死んだ後の古代アテネの政治を指し、プラトンやアリストテレスが民主政の堕落した形として批判した言葉。 - 恐怖政治(きょうふせいじ):
投獄や処刑などの暴力的な手段で反対する者を抑えつけ、政治の目的を果たそうとするやり方。
特に、フランス革命の末期に、ロベスピエールらのジャコバン派が行った独裁政治を指す。
「まつりごと」は神をまつること、「政」は正すこと
政治を表す古い日本語の「まつりごと」は、もとは「祭り事」という意味です。
古代には、神をまつり、神の意を知ってそれを行うことが、そのまま国を治めることでした。
そのため、神をまつることを指した言葉が、国を治めることも表すようになりました。
漢字の「政」は、「正」を音の部分に持つ字です。
中国の古い字書『説文解字』は、「政」を「正なり」と説明しています。
『論語』では、魯の国の重臣、季康子に政治とは何かと問われた孔子が、「政は正なり」と答えています。
孔子はこれに続けて、上に立つ者が自ら正しくふるまえば、下の者もみな正しくなると説いています。




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